その他・雑談道はきれいになった。でも、バイクにとって本当に安全になったのか?

昔に比べると、今の道路は本当にきれいになりました。

舗装はよくなり、信号や標識も整備され、バイパスも増えました。
車もバイクも性能が上がり、タイヤ、ブレーキ、サスペンション、安全装備も大きく進化しています。

では、バイクにとって今の道は、昔より本当に安全になったのでしょうか。

私は、半分は「安全になった」と思います。
でも、もう半分は「危なさの種類が変わっただけ」ではないかとも感じています。

昔のバイク乗りは、今考えるとかなり無茶をしていた

70年代、80年代のバイク乗りの話を聞くと、今では考えられないような話が普通に出てきます。

「この直線で何キロ出るか試した」
「赤信号で止まろうと思ったら、止まれたのは三つ先の信号だった」
「夜中のバイパスで最高速を試した」
「峠でどこまで寝かせられるかやっていた」

今なら、とても笑い話では済みません。

もちろん、当時のライダーがみんな無茶をしていたわけではありません。
まじめに乗っていた人、安全に気をつけていた人もたくさんいました。

ただ、今と比べると、無茶を無茶として止める空気が、まだ弱かった時代だったのではないかと思います。

バイクに乗ること自体が、もっと身軽で、もっと荒っぽくて、良くも悪くも自由だった。
その自由さの裏側には、今から考えるとかなり大きな危険もありました。

ヘルメットも、最初から当たり前ではなかった

今の感覚では、バイクに乗るならヘルメットをかぶるのは当然です。

しかし、昔はそうではありませんでした。

ヘルメットの着用義務は段階的に広がっていき、1975年には一部の道路で51cc以上、1978年にはすべての道路で51cc以上、そして1986年に原付を含むすべてのバイクで義務化されました。つまり、私たちが高校生くらいの頃までは、原付にノーヘルで乗っていても今のような違反ではなかった時代があったわけです。

ただ、私自身はモトクロスをやっていましたので、ヘルメットをかぶらずにバイクに乗るという感覚は、正直ありえませんでした。

モトクロスでは、転ぶことがあります。
飛ぶこともあります。
頭を打つ可能性もあります。

だからヘルメットは「法律で決まっているからかぶるもの」ではなく、かぶっていないと気持ち悪いもの。
もっと言えば、身体の一部に近い感覚でした。

今思えば、ここにも時代の差があります。

昔は、バイクに乗ること自体がもっと軽く考えられていた面もありました。
でも、バイクは昔も今も、転べば身体を直接打つ乗り物です。

そこは、時代が変わっても変わりません。

事故は大きく減った。これは間違いない

数字で見ると、交通事故は昔より大きく減っています。

昭和45年、1970年の交通事故死者数は1万6,765人で、これは過去最多の数字でした。令和6年の交通事故死者数は2,663人ですから、死者数だけを見れば、現在は大きく減っています。

これは、道路整備、信号や標識、飲酒運転への厳罰化、車の安全性能、救急医療、シートベルト、ヘルメット、そして社会全体の安全意識の向上など、いろいろな積み重ねの結果だと思います。

バイクも同じです。

今のバイクは、昔よりよく止まります。
タイヤもよくグリップします。
フレームもサスペンションも進化しています。
ABSやトラクションコントロールなど、安全を助ける装備も増えました。

ここだけ見れば、今の方が安全です。

でも、それだけで「今の道は昔より簡単になった」とは言えないと思います。

道は良くなった。でも、車の数も大きく増えた

ここはとても大事なところです。

昔より道路は整備されました。
でも、その道路を走る車の数も、昔とは比べものにならないほど増えています。

自動車検査登録情報協会の統計では、軽自動車を含む乗用車の保有台数は、1980年に約2,275万台でした。それが2024年には約6,198万台になっています。単純に言えば、1980年の約2.7倍です。全車種合計でも、1980年の約3,733万台から、2024年には約8,257万台へ増えています。

つまり、道路はきれいになりました。
でも、そこを使う車の数も大幅に増えました。

昔は道が荒かった。
でも、車の数は今ほど多くなかった。

今は道がきれいになった。
でも、周りには車が多い。
しかも車は大きくなり、静かになり、速くなり、死角も増えています。

この変化は、バイクから見るとかなり大きいと思います。

道路が良くなったから安全になった、とは単純には言えません。
道路が良くなった分、車も増え、速度も上がり、交通の密度も変わった。

バイクはその中で、昔より多くの車に囲まれて走っているわけです。

昔の危なさと、今の危なさは違う

昔の危なさは、わかりやすいものでした。

飛ばしすぎる。
止まれない。
曲がれない。
無理な追い越しをする。
ヘルメットや装備が甘い。
飲酒運転や無謀運転への意識も、今ほど厳しくない。

つまり、危険の多くが「荒さ」から来ていたように思います。

一方、今の危なさは少し違います。

スマホを見ている歩行者。
スマホに気を取られているドライバー。
高齢ドライバー。
急に進路を変える自転車。
静かに近づいてくる車。
見落とされるバイク。
複雑な交差点。
交通量の多い市街地。

車側の安全装備が増えたことで、逆に運転者が安心しすぎているように見える場面もあります。

昔の道は荒かった。
今の道は複雑です。

ここが大きな違いだと思います。

大分のような地方と、大都市では危なさも違う

大分のような地方と、東京・大阪・福岡のような大都市では、バイクから見える危険も違います。

地方では、交通量そのものは大都市ほど多くありません。
しかし、そのぶん速度が上がりやすい。

見通しのよい直線。
広い郊外路。
山間部の道。
農道や生活道路からの合流。
軽トラックや高齢ドライバーの予測しにくい動き。
夜間の歩行者や自転車。
落ち葉、砂、動物、路面の荒れ。

地方では、空いている道ほど危ないという面があります。

一方、大都市では速度よりも密度が怖い。

車、タクシー、バス、トラック、自転車、歩行者、配送車、フードデリバリー。
そのすべてが、狭い空間の中で動いています。

東京や大阪、福岡のような都市部では、バイクの危険は「スピード」だけではありません。
むしろ、死角、急な車線変更、右左折、すり抜け中の接触、自転車や歩行者との交錯が怖い。

地方は、見えているのに危ない。
都市部は、見えないところから危ない。

この違いは、バイクに乗るうえでかなり大きいと思います。

昔を知っているからこそ、今の安全を軽く見ない

70年代、80年代のバイク文化には、たしかに熱がありました。

若いライダーが多く、バイクに対する憧れも強かった。
原付から始まり、250cc、400cc、そして大型へ。
小さなバイクから少しずつ経験を積んでいく流れもありました。

その時代を否定するつもりはありません。

でも、昔を美化しすぎるのも違うと思います。

ヘルメットをかぶらず原付に乗れた時代。
直線で最高速を試す人がいた時代。
止まれると思って止まれなかった話が、武勇伝のように語られた時代。

それは、自由だったというより、危険に対する感覚が今より粗かった時代でもあります。

だからこそ、昔を知っている世代が今伝えるべきことは、
「昔はよかった」だけではないと思います。

昔の無茶を知っている。
昔の事故の多さも知っている。
昔の装備の頼りなさも知っている。

だからこそ、今の安全装備や安全意識を軽く見てはいけない。

そういう伝え方が必要なのではないでしょうか。

速く走るより、危ない場所にいないこと

今のバイクは速いです。

小排気量でもよく走ります。
大型バイクになれば、公道では使い切れないほどの性能があります。

でも、今のライダーに本当に必要なのは、どれだけ速く走れるかではないと思います。

大事なのは、危ない位置関係に自分を入れないことです。

車の死角に入らない。
交差点で無理に前へ出ない。
不安定な動きをする車から距離を取る。
スマホを見ていそうな歩行者や自転車を信用しすぎない。
地方の空いた道でも、速度を上げすぎない。
都市部では、車の流れに埋もれすぎず、逃げ場を残す。

これは、単なる安全運転というより、バイクに長く乗り続けるための技術だと思います。

昔は「腕があるかどうか」が語られやすかった時代かもしれません。
でも今は、それに加えて「危ない場所に近づかない判断力」が必要です。

速く走れることより、無事に帰ってこられること。
それが趣味としてバイクを楽しむうえでは、いちばん大切なことではないでしょうか。

道はきれいになった。でも、簡単になったわけではない

昔に比べれば、今の道は確かにきれいになりました。
車もバイクも安全になりました。
交通事故死者数も大きく減りました。

でも、バイクから見た道路が簡単になったわけではありません。

昔には昔の荒さがありました。
今には今の複雑さがあります。

そして、車の数は昔より大きく増えています。
道路が整備された一方で、バイクはより多くの車の中で走るようになりました。

だから、昔の感覚をそのまま令和の道に持ち込むのは危険です。
同時に、今の安全装備があるから大丈夫と考えるのも危険です。

バイクは自由な乗り物です。
でも、その自由は、自分を守る意識があって初めて続けられるものだと思います。

昔を知っているからこそ、今の道を甘く見ない。
今のバイクの進化をうまく使いながら、無茶ではなく、長く楽しむ方向へ進んでいく。

それが、これからのバイク乗りに必要な考え方ではないでしょうか。