How toセパハンは私には無理、と思う前に。低いハンドルの意味と、気持ちよく乗るコツ

「いや、自分はセパハンなんて絶対に無理です」

お店でお話ししていると、そう言われることが本当に多いです。

「普通の人なので、あんな低いハンドルは無理です」
「腰が痛くなるに決まっています」
「手首がつらそうです」
「もっとハンドルの高いバイクじゃないと乗れません」

もちろん、体格や体の状態によって合う、合わないはあります。
無理をして乗る必要はありません。

でも、その前に少しだけ考えてみてほしいのです。

本当にセパハンそのものが無理なのでしょうか。
それとも、セパハンの姿勢を「腕で体を支えるもの」だと思っているから、無理に感じているのでしょうか。

セパレートハンドル、いわゆるセパハンは、たしかにハンドル位置が低く、上体が前に倒れます。
ネイキッドやツーリングモデルに比べれば、楽な姿勢とは言いにくい部分もあります。

でも、そもそもなぜスポーツバイクのハンドルは、あの低い位置にあるのでしょうか。

あれは、見た目だけのためではありません。
我慢して乗るための形でもありません。

セパハンの低い位置には、ちゃんと意味があります。

セパハンは、前輪を使うための形

スポーツバイクは、前輪をとても大事に使います。

ブレーキをかける。
フロントタイヤに荷重をかける。
そこからコーナーへ入っていく。
曲がり始めで、バイクの向きを変えていく。

この時、ライダーの上体が後ろに残っていると、前輪をしっかり使いにくくなります。

セパハンで上体が前に入りやすい姿勢になると、フロントタイヤに荷重を乗せやすくなります。
フロントの接地感が分かりやすくなり、バイクの向きも変えやすくなります。

つまりセパハンは、ただ低いハンドルなのではなく、前輪を使いやすくするための形なのです。

高速で風に逆らわないための形でもある

もうひとつは、空気抵抗です。

スピードが出ると、ライダーの体には強い風圧がかかります。
上体が起きた姿勢だと、風を正面から受けてしまい、疲れやすくなります。

セパハンで前傾姿勢になると、ライダーの体が低くなり、風を受けにくくなります。
スポーツバイクのカウルの中にも体を収めやすくなります。

つまりセパハンは、高速走行で体を小さくまとめ、バイクを安定させるための形でもあります。

ただし、ここで問題があります。

街中や低速では、風圧で体を支えてもらえません。
そのため、乗り方を知らないままセパハンに乗ると、手首、肩、首、腰に負担が出やすくなります。

そこで大事になるのが、姿勢の作り方です。

セパハンがつらい本当の理由

セパハンがつらいと感じる時、多くの場合、ハンドルの低さそのものよりも、腕で体を支えてしまっていることが原因になっています。

上体を前に倒す。
頭が前に出る。
その重さを手首で受ける。
腕で突っ張る。
肩に力が入る。
腰も固まる。

これでは、たしかにつらいです。

これはセパハンに乗っているというより、腕立て伏せの姿勢でバイクに乗っているようなものです。

本来、セパハンの前傾姿勢は、腕で体を支える姿勢ではありません。

ステップを踏み、下半身と体幹で上体を支え、腕はハンドル操作のために残しておく。

ここがとても大事です。

ステップは「足を置く場所」ではなく「踏む場所」

セパハンを楽に、そして気持ちよく乗るために一番大事なのは、ステップの使い方です。

多くの方は、ステップをただ足を置く場所だと思っています。
ブレーキペダルやチェンジペダルを操作するために、土踏まずあたりでなんとなくステップに乗っている方も多いと思います。

もちろん、街乗りではそれでも走れます。

でも、そのまま前傾姿勢を取ると、下半身で体を支えにくくなります。
足首も膝も股関節も使いにくくなり、上体の重さを腕で受けるしかなくなります。

セパハンのバイクでは、ステップはただの足置きではありません。
ライダーが体を支えるための、とても大事な支点です。

基本は、母指球あたりでステップを踏む。
ステップに足を「置く」のではなく、ステップを「踏む」。

そうすると、足首、膝、股関節が使いやすくなり、上体を前に出しても腕で突っ張らずに支えやすくなります。

強烈に踏み込む必要はありません。
まずは、足を置いているだけではなく、それなりにステップを踏んでいる感覚を作ることです。

それだけでも、頭と胸が前に置きやすくなり、腕の力が抜けやすくなります。

ニーグリップより先に、ステップを踏む

セパハンの姿勢というと、ニーグリップで体を支えるとか、タンクに伏せるというイメージを持つ方も多いと思います。

もちろん、それも間違いではありません。

ブレーキングの時に膝や内ももでタンクを受け止めることは大事ですし、高速域ではカウルの中に体を入れるために上体を低くすることもあります。

ただ、私はそれ以上に大きなポイントは、ステップの踏み込みだと思っています。

ニーグリップだけで上体を支えようとすると、どうしても体が固まりやすくなります。
タンクに伏せる意識が強すぎると、今度は手首や腕に体重が乗りやすくなります。

でも、母指球あたりでステップを踏めていると、下半身から体を支える土台ができます。

足首、膝、股関節が使える。
腰の位置が決まる。
頭と胸を前に置きやすくなる。
そして、腕に体重を預けなくて済む。

ニーグリップは、ステップで作った姿勢を補助するもの。
タンクに伏せるのは、前傾姿勢の結果としてそう見えるもの。

そう考えたほうが、私は分かりやすいと思います。

大事なのは、ハンドルに体を預けることでも、タンクに体を預けることでもありません。
ステップを踏んで、下半身で体を支え、その上で頭と胸を前に置くことです。

この感覚が出てくると、セパハンの姿勢はかなり楽になります。
そして、バイクの反応も分かりやすくなります。

ブレーキやチェンジペダルは、必要な時だけ触る

ここで、こう思う方もいるかもしれません。

「でも、ブレーキペダルやチェンジペダルはどうするの?」

これは、必要な時だけ足をずらして操作します。

ブレーキペダルやチェンジペダルは、常に足を置いておく場所ではありません。
使う時だけ触るものです。

普段は、ステップを踏んで体を支えることを優先します。
シフト操作をする時だけ足を前に出す。
リアブレーキを使う時だけ足をずらす。
操作が終わったら、またステップを踏める位置に戻す。

これができると、上体を前に置いても、腕に体重が乗りにくくなります。

逆に、いつでもペダルを踏めるように土踏まずでステップに乗っていると、体を支える力が弱くなります。
その状態でセパハンに乗ると、手首や肩がつらくなりやすいのです。

お尻でどんと座らない

もうひとつ大事なのが、シートの使い方です。

シートにお尻でどんと座る。
体重を全部シートに預ける。
その状態で上体だけ前に倒す。

これをすると、頭と胸の重さがそのまま腕に乗りやすくなります。

スポーツバイクでは、シートはただ座る場所というより、腰の位置を決める場所と考えたほうが分かりやすいです。

お尻はシートに乗っている。
でも、体はステップで支えている。

シートに体重を預けすぎず、ステップを踏んで下半身で上体を支える。
この感覚が出てくると、セパハンでも腕の力が抜けてきます。

イメージはスキージャンプ

この姿勢を説明する時、私はスキージャンプのようなイメージが近いと思っています。

スキージャンプの選手は、前に倒れているように見えます。
でも、手でどこかに寄りかかっているわけではありません。

足で板を踏み、下半身で体を支え、頭と胸を前に置いています。

セパハンの姿勢も、それに近いところがあります。

頭は前にある。
胸も前にある。
でも、手首で体を支えているわけではない。
ステップを踏んで、下半身で支えている。

この感覚が分かると、セパハンの前傾姿勢はかなり変わります。

「前傾する=腕で支える」ではありません。
「前傾する=足で支えて、頭を前に置く」です。

ここを間違えると、セパハンはただつらいハンドルになります。
ここが分かると、セパハンはバイクの動きを感じやすいハンドルになります。

これはモトクロスでも同じ

この「ステップを踏んで、頭を前に置く」という感覚は、実はセパハンのバイクだけの話ではありません。

モトクロスでもまったく同じです。

コーナーで「なんか曲がらないな」と感じる時は、だいたい頭が後ろに残っています。
上体が遅れて、頭が後ろに行く。
すると前輪に必要な荷重が乗りにくくなり、曲がり始めの反応が悪くなります。

そして、そういう時はたいていステップの踏み込みも弱いです。

ステップに足を置いているだけ。
土踏まずでなんとなく踏んでいるだけ。
これでは、まともなフォームにはなりにくいです。

母指球あたりでステップを踏む。
強烈に踏み込む必要はありません。
それなりにステップを踏んで、足首、膝、股関節が使える状態を作る。

それだけでも、自然と頭が前に行きやすくなります。

頭を前に出そうとして、腕で無理に前へ行くのではありません。
ステップを踏むから、体が支えられる。
体が支えられるから、頭を前に置ける。
頭が前にあるから、フロントタイヤが使いやすくなる。

これはモトクロスでも、スーパースポーツでも同じです。

バイクは違っても、ライダーの体の使い方には共通する部分があります。

「曲がらない」
「フロントの反応が鈍い」
「腕に力が入る」
「ハンドルに体重が乗る」

そう感じる時は、ハンドルの高さや車体のせいにする前に、一度ステップを見直してみるといいかもしれません。

ちゃんとステップを踏めているか。
土踏まずでただ足を置いていないか。
頭が後ろに残っていないか。

そこが変わるだけで、バイクの反応はかなり変わります。

曲げるきっかけは、イン側の足を少し抜く

ステップを踏んで体を支えられるようになったら、次は曲げるきっかけです。

私の場合、曲がりたい方向、つまりイン側の足を少し浮かすようにします。
完全に足を上げるというより、イン側ステップの荷重を少し抜く感覚です。

すると、不思議とバイクは曲がりたい方向へ傾いていきます。

両足で同じように踏んだままだと、バイクの動きが少し固くなることがあります。
そこでイン側の力を少し抜き、外側の足で体を支える。
頭と胸は前、そして曲がりたい方向へ置く。

そうすると、ハンドルをこじらなくても、バイクが自然に内側へ入っていきやすくなります。

公道では大きな動作は必要ありません。
あくまで軽く荷重を抜くくらいで十分です。

「曲げる」というより、バイクが曲がる姿勢を作ってあげる。
そんな感覚に近いと思います。

肘は軽く曲げて、腕を残す

ステップで体を支えられるようになると、腕に余裕ができます。

腕は突っ張らない。
肘を軽く曲げる。
肩の力を抜く。
ハンドルは握りしめるのではなく、軽く添える。

腕が突っ張っていると、バイクの自然な動きを邪魔してしまいます。
路面からの入力も全部体に返ってきますし、ハンドル操作も硬くなります。

ハンドルは体を支えるための棒ではありません。
操作をする場所であり、バイクからの情報を受け取る場所です。

そのためには、腕を自由にしておく必要があります。

セパハンの良さが分かる瞬間

このフォームが取れるようになると、セパハンはそれほど恐れるものではありません。

むしろ、セパハンの本当の良さが見えてきます。

ステップを踏んで、下半身で支える。
頭と胸を前に置く。
腕は突っ張らず、軽く曲げておく。
フロントタイヤの接地感を感じながら、バイクの向きを変えていく。

これができると、ワインディングでスッと向きが変わる感覚が出てきます。
街中の交差点でも、思ったラインに自然に入っていきやすくなります。
フロントタイヤの存在が分かりやすくなり、バイクが自分の下で動いている感覚が出てきます。

憧れていたスーパースポーツらしいハンドリングが、自分の手の中に入ってくる。

それって、すごくないですか。

ハンドルを変える前に、体の使い方を見直してみる

セパハンがきついから、バーハンドルに交換する。
さらに高いハンドルにする。
ハンドルポストをセットバックする。

もちろん、それが必要な場合もあります。
体格や体の状態によって、ポジション変更が助けになることもあります。

でも、その前に一度考えてみてほしいのです。

本当にハンドルが低すぎるのでしょうか。
それとも、腕で体を支えてしまっているだけなのでしょうか。

ステップを踏まず、シートにお尻でどんと座り、土踏まずでなんとなく足を置いて、上体の重さを手首で受け止めていないでしょうか。

もしそうなら、まず変えるべきなのは、ハンドルの高さではなく、体の使い方かもしれません。

「セパハンは私には無理」と思う前に

「セパハンは私には無理」

そう思ってしまう前に、一度見直してほしいことがあります。

それは、ハンドルの高さそのものではなく、ポジションを作る時の力のかけ方です。

シートにどんと座って、土踏まずでステップに足を置き、上体の重さを腕で支える。
この状態でセパハンに乗れば、手首も肩も腰もつらくなります。

でも、母指球あたりでステップを踏み、下半身で体を支え、頭と胸を前に置く。
腕は突っ張らず、ハンドル操作のために残しておく。

この感覚が分かってくると、セパハンはただ低くてきついハンドルではなくなります。

フロントタイヤの接地感が分かりやすくなる。
バイクの向きが自然に変わる。
腕に余計な力が入らないので、操作が軽くなる。
ワインディングや街中のコーナーでも、バイクがスッと反応してくれる。

それは、いままで感じたことのない気持ちの良い操作感かもしれません。

セパハンが合わないのではなく、体の支え方がまだ合っていないだけかもしれない。
そう考えると、スーパースポーツやセパハンのバイクは、もう少し近い存在になると思います。

もちろん無理は禁物です。
体格や体の状態によって、ポジション変更が必要なこともあります。

でも、「セパハンだから無理」と決めつける前に、まずはステップを踏むこと、下半身で支えること、腕を自由にすることに目を向けてみてください。

きっと、バイクの動きが今までと違って感じられるはずです。

セパハンには意味があります。
そして、その意味に合った乗り方があります。

それが分かると、セパハンは「つらいハンドル」ではなくなります。

憧れたスーパースポーツのハンドリングを味わうための、ちゃんと意味のある形だったのだと分かってくるはずです。