バイク購入バイクショップ選びは、あなたがどんなライダーになるかを選ぶことでもある

同じバイクなら、どこで買っても同じでしょうか?

新車であれば、同じメーカー、同じ車種、同じ色なら、基本的にはどこのお店で買っても同じバイクです。

それなら、少しでも安いところで買えばいい。
近いところで買えばいい。
ネットで見つけて買えばいい。

そう考えるのも、ごく自然なことだと思います。

でも長くバイクショップをやっていると、本当に「同じものを売っているだけ」なのだろうか、と考えることがあります。

バイクを買うということは、車両だけでなく、その店の考え方や空気まで、少なからず一緒に選んでいるのではないでしょうか。

学校には「校風」があります

たとえば中学校や高校。

どこの学校でも、数学や国語そのものが大きく変わるわけではありません。

それでも、学校によって雰囲気はかなり違います。

県内でも有数の進学校もあれば、もう少し自由な校風の学校もある。

もちろん、どちらが良い悪いという話ではありません。

ただ、そこで3年間過ごすことで、その後の考え方や進路に少なからず影響を受けることはあるでしょう。

なぜなのか。

周囲の人たちが、何を「普通」と思っているのか。

何を頑張ることが格好いいとされているのか。

先生が何を褒め、何を注意するのか。

友人たちが何を目指しているのか。

そういうものを毎日見聞きしているうちに、自分の中の基準も少しずつ形づくられていくからだと思います。

人は、自分で思っている以上に「周囲の普通」に影響されるものです。

バイクショップにも「風土」があります

これはバイクショップも少し似ています。

同じメーカーの同じバイクを売っていても、お店によって考え方はかなり違います。

速く走ることを大切にする店。

カスタムを楽しむ店。

ツーリングを中心に考える店。

サーキットやオフロードを勧める店。

整備や安全について細かく話す店。

お客様との距離が近い店もあれば、販売と整備を淡々と行う店もあります。

それぞれに、その店なりのバイク観があります。

そして長くそこに通えば、

「バイクって、こういうものなんだ」

という感覚には、少なからず影響を受けると思います。

何を「格好いい」と思うのか

これが意外と大きいと思います。

公道で速く走ることを格好いいと思うのか。

余裕を持って走ることを格好いいと思うのか。

大きな排気量へ乗り換えることだけをステップアップだと思うのか。

小さなバイクをきちんと扱い切ることにも価値を感じるのか。

多少整備状態が悪くても走ればいいと思うのか。

きちんと整備された状態で乗ることを大切にするのか。

速さを楽しみたいなら、サーキットやオフロードコースへ行こうと考えるのか。

こうしたことは、メーカーのカタログやスペック表には書いてありません。

でもバイクショップでは、日々の会話の中で自然に伝わっていきます。

特に初めてバイクに乗る人なら、

「バイク乗りって、こういうものなんだ」

という基準を、最初に付き合ったショップや周囲のライダーから学ぶことも多いでしょう。

バイクの場合、それが安全にもつながります

そしてバイクでは、ここが特に重要です。

バイクは、判断ひとつが大きな事故につながることもある乗り物です。

何を危険だと思うのか。

どこで引くのか。

どこまでなら大丈夫だと考えるのか。

タイヤやブレーキの状態をどこまで気にするのか。

自分の技量をどう考えるのか。

そうした日常の判断基準が、そのまま安全につながっていきます。

つまりショップの風土というのは、

「どんなカスタムが好きになるか」

くらいの話だけではありません。

そこで身についた考え方が、その後の安全意識にまで影響する可能性がある。

バイクが命に関わる乗り物である以上、これは決して小さなことではないと思います。

バイクショップは、バイクを売る場所であると同時に、

「何を普通だと思うライダーになるか」

にも少しずつ影響する場所なのかもしれません。

「この店は嫌いだけど、ここで買おう」は少ないのでは

バイクは安い買い物ではありません。

そして買って終わりでもありません。

点検、整備、車検、修理、カスタム、乗り換え。

購入後も、その店との付き合いは続きます。

ですから、

「この店の人は気に入らない」
「この店の考え方も嫌い」
「話も合わない」

それでも、

「ここでこのバイクを買おう」

となることは、それほど多くないのではないでしょうか。

もちろん、そこにしか欲しい車両がない、価格が安い、納期が早いなど、いろいろな理由はあるでしょう。

でも多くの場合、

「この店なら付き合えそう」
「この人の話なら聞けそう」
「ここの考え方は嫌いではない」

そんな小さな共感があって、購入という行動につながるのだと思います。

完全に考え方が一致する必要はありません。

ただ、少なくとも、

「この店を選べる程度には、この店の空気を受け入れている」

ということはあるのではないでしょうか。

そして、付き合ううちに影響を受けていく

最初にその店を選んだ理由は、

家が近かったから。

欲しい色があったから。

たまたま立ち寄ったから。

それくらいでもいいと思います。

でも、5年、10年と付き合っていけば、

「こういう時は無理をしない方がいい」
「ここはきちんと整備した方がいい」
「こういう楽しみ方もある」
「速く走りたいなら、こういう場所がある」

そんな店の考え方が少しずつ自分の中に残っていく。

それが、いつの間にか自分のバイク観になっていくこともあると思います。

学校の校風と同じで、

入った時には意識していなくても、長くそこにいることで自然と影響を受ける。

バイクショップにも、そんな部分があるのではないでしょうか。

ネットで買うことが悪いわけではありません

今はネットで商品を買うことも当たり前になりました。

価格を比較できますし、全国から欲しいものを探せる。

とても便利です。

ネットで買うこと自体が悪いという話ではありません。

ただ、ネットで商品だけを買う場合、

そこには対面のショップで得られる「風土」はあまりありません。

商品は届きます。

スペックもわかります。

レビューも見ることができます。

でも、

「その使い方なら、そこまでしなくても十分ですよ」

「それは危ないからやめた方がいいですよ」

「こっちの方があなたには合うかもしれません」

そんな一言は、商品と一緒には届きません。

つまり、

ネットにはネットの良さがある。

一方で、店で買うということには、商品以外のものを受け取っている部分もある。

その違いなのだと思います。

バイクショップは何を売っているのか

自分たちバイクショップも、ここはもっと意識しなければならないと思っています。

バイクを売る。

整備する。

部品を付ける。

もちろん、それが仕事です。

でもそれだけではなく、

どうバイクを楽しむのか。

どう安全に付き合うのか。

どうすれば長く乗り続けられるのか。

そういうことまで、日々の会話の中でお客様に伝えている。

だとすれば、店側にも責任があります。

何を格好いいと言うのか。

何を危ないと言うのか。

何を勧めるのか。

何を止めるのか。

何気ない一言まで含めて、その店の風土になっていきます。

同じバイクでも、その後まで同じではない

同じバイクなら、どこで買っても車両そのものは同じです。

でも、その後のバイクライフまで同じとは限りません。

どんな人たちと付き合い、

どんな話を聞き、

何を普通だと思い、

何を格好いいと思うようになるのか。

それによって、バイクとの付き合い方は少しずつ変わっていくと思います。

バイクを買うということは、

車両を選ぶことだけではなく、

その店との付き合いを選ぶことでもある。

そして、その店との付き合いは、

自分がどんなバイク乗りになっていくのかにも影響するかもしれません。

そう考えると、

「同じバイクなんだから、どこで買っても同じ」

とは、やはり言い切れない気がします。

皆さんはどうでしょうか。

最初に付き合ったバイク屋さんや、長く通ったショップから、

今でも自分の中に残っている「教え」や「考え方」はありますか?

良かった影響でも、逆に「これは違ったな」という経験でも構いません。

ぜひ聞かせてください。