排気量は上下ではなく、楽しめる速度域のスケール感かもしれない

バイク選びでは、どうしても排気量や馬力に目が行きます。
大きい方が速い。
大きい方が余裕がある。
大きい方が上。
そう考えたくなる気持ちは、よく分かります。
もちろん、大型バイクには大型バイクの魅力があります。
低回転から余裕のあるトルク。
高速道路での快適さ。
長距離を走った時の疲れにくさ。
所有する満足感。
車体の質感や装備の充実。
当店でも大型バイクは販売していますし、大型バイクの魅力を否定したいわけではありません。
ただ、ひとつ思うことがあります。
「排気量が大きいほど、エンジンを楽しめる」
これは、本当にそうなのでしょうか。
エンジンを楽しむとは、どういうことなのか
エンジンを楽しむというのは、単に速いということだけではないと思います。
アクセルを開けた分だけ反応する。
回転が上がるにつれて、音や振動や加速感が変わる。
低速、中速、高回転で表情が違う。
ギアを選ぶ意味がある。
回転を落としすぎないように走る。
立ち上がりでアクセルを開ける。
そういう操作と反応のつながりを感じることが、エンジンを楽しむということではないでしょうか。
つまり、エンジンの性能を眺めるのではなく、実際に使うこと。
バイクと自分が、アクセルとギアを通じて会話しているような感覚です。
大排気量車は、おいしいところが遠いことがある
大排気量車は、たしかに速いです。
少しアクセルを開けるだけで前に出ます。
低回転でも十分に走ります。
ギアを細かく選ばなくても、力で押し出してくれます。
これはとても楽です。
ただ、その一方で、一般道でエンジンを気持ちよく回そうとすると、すぐに速度が出すぎることがあります。
たとえば、法定速度60km/hの道で、少し気持ちよく回しただけなのに、あっという間に現実的ではない速度域に入ってしまう。
エンジンの低速、中速、高回転を順番に味わおうとすると、速度の方が先に道路のスケールを超えてしまうのです。
しかも、パワーがあるからといって、短く止まれるわけではありません。
速度が上がれば、止まる距離も伸びます。
車重があれば、止める、曲げる、避けるために処理するエネルギーも大きくなります。
速く走れる性能と、安全にその速度を扱えることは、別の話です。
大型は「開ける」より「抑える」乗り物になることもある
リッタークラスのようなバイクになると、一般道では「どう開けるか」よりも、「どう抑えて乗るか」が大事になる場面が多いと思います。
性能はすごい。
加速もすごい。
所有感もある。
でも、街中ではその性能を出す場所がほとんどありません。
一速でも十分すぎる。
少し開けただけで速度が乗る。
全開にできる場面など、ほぼありません。
そうなると、エンジンを使い切る楽しさというより、出すぎる力をうまく抑えて乗る楽しさになります。
それはそれで、大型ならではの世界です。
ただ、「エンジンを回して楽しむ」という意味では、少し違う楽しさかもしれません。
小さい排気量は、エンジンの全体像を使いやすい
一方で、125ccや155cc、250ccくらいのバイクは、エンジンの全体像が一般道の速度域の中に収まりやすいです。
低速で走る。
中速を使う。
高回転まで回す。
ギアを選ぶ。
回転を落としすぎないようにする。
立ち上がりでアクセルを開ける。
そういう操作が、普通の道路の中で感じやすい。
暴力的な加速はありません。
でも、だからこそアクセルを開けられます。
だからこそ回せます。
だからこそ、エンジンの変化が分かります。
125ccが楽しい理由は、ここにあると思います。
小さいから我慢するのではなく、小さいから使える。
この「使える」という感覚は、バイクの楽しさとしてかなり大きいと思います。
125ccの「ちょうどよさ」
125ccは、日本の一般道ではかなりちょうどいい排気量だと思います。
もちろん、力に余裕があるわけではありません。
坂道や流れの速い道では、もう少し欲しいと思う場面もあります。
二人乗りや長距離では、余裕が足りないこともあります。
それでも、日常の速度域でエンジンを使える楽しさがあります。
アクセルを開ける。
回転を上げる。
ギアを選ぶ。
高回転までしっかり回す。
大きい排気量では、一般道でなかなか味わいにくい部分を、125ccでは感じやすいのです。
「エンジンを高回転までしっかり回す」
これを実感しやすいのは、125ccの大きな良さだと思います。
ただし、125ccが万能という話ではない
もちろん、125ccがすべての道に合うという話ではありません。
ここは誤解されやすいところです。
自動車専用道路やバイパスを日常的に使う地域だと、125ccでは不便に感じる場面もあると思います。
地域によって道路事情はかなり違います。
下道中心なら、125ccはかなり楽しい。
ただ、走る道によっては155cc以上の方が現実的。
これはあると思います。
155ccになると、自動車専用道路を使える場面が増えますし、流れの速い道でも少し余裕が出ます。
250ccになれば、高速道路や長距離もかなり現実的になります。
つまり、125ccが絶対に正解ということではありません。
大事なのは、自分がよく走る道のスケールと、バイクの排気量が合っているかどうかだと思います。
小さい排気量から始める意味
よく、お店でも
「最初は小さい排気量から始めるのもいいですよ」
という話をすることがあります。
これは、単に維持費が安いからとか、軽いからとか、扱いやすいからだけではありません。
エンジンの使い方を知るには、小さい排気量の方が分かりやすいことがあるからです。
大きい排気量のバイクは、多少ギアが合っていなくても走ります。
回転を外しても、低速トルクで前に出てくれます。
アクセルを大きく開けなくても、十分に速いです。
それは便利です。
でも、その便利さがあるからこそ、エンジンの使い方を覚える前に、パワーが助けてくれる面もあります。
小さい排気量では、そうはいきません。
回転を落としすぎると走りません。
ギアが合っていないと前に出ません。
立ち上がりでアクセルを開けないと、気持ちよく加速しません。
だからこそ、エンジンを使う感覚が身につきやすいのです。
YZF-R125やMT-125が面白い理由
YZF-R125やMT-125のようなバイクは、125ccでありながら車体がしっかりしています。
ただの移動用というより、走りを楽しめる作りです。
ブレーキ、サスペンション、ポジション、車体の安定感。
その中で、125ccのエンジンをしっかり使って走る。
これが面白いのです。
低回転だけではなく、中回転、高回転まで使う。
ギアを選ぶ。
回転を外さない。
コーナーの立ち上がりでアクセルを開ける。
大きなパワーでごまかせないからこそ、自分でエンジンを使って走っている感覚があります。
初心者だけのバイクではありません。
バイクの基本的な楽しさを、かなり濃く味わえるバイクだと思います。
モトクロスでも同じことがある
これは公道のバイクだけでなく、モトクロスでも似たところがあります。
85ccで育ったライダーは、大きい排気量に乗っても速いことが多いです。
なぜかというと、エンジンの使い方を知っているからです。
低速を使う場所。
中速を使う場所。
高回転まで引っ張る場所。
トルクピークを使う場所。
トルクピークを越えて、伸びを使う場所。
コースの中で、どの回転域をどこで使うかを体で覚えています。
小さい排気量は、パワーでごまかせません。
だから、回転を落としすぎない。
ギアを選ぶ。
勢いを殺さない。
エンジンを使い切る。
そういう基本が身につきやすいのです。
逆に、最初から大きい排気量に乗ると、ありすぎるパワーを怖がって、低速だけで走ってしまうことがあります。
それでも前には出ます。
でも、それはエンジン全体を使えているとは限りません。
「トルクがあるから楽しい」も正しい
ここで誤解してほしくないのは、トルクのあるバイクの楽しさを否定しているわけではないということです。
「低回転からトルクがあって楽しい」
これは、とてもよく分かります。
ギアを細かく選ばなくても前に出る。
アクセルを少し開けるだけで力強く走る。
ゆったり流していても気持ちいい。
これは大型や中排気量ならではの魅力です。
ただ、それは「エンジンを回して使う楽しさ」とは、少し別の楽しさかもしれません。
トルクに乗って楽に走る楽しさ。
回転を使って引き出す楽しさ。
どちらが上という話ではありません。
楽しさの種類が違うのだと思います。
排気量は、速度域のスケール感を決めるもの
排気量は、上下関係だけで考えるものではないと思います。
125ccより250ccが上。
250ccより400ccが上。
400ccより大型が上。
そういう見方をしてしまいがちですが、本来は少し違うのではないでしょうか。
排気量は、そのバイクが気持ちよく走れる速度域のスケール感を決めるもの。
125ccには、125ccの気持ちいい速度域があります。
155ccには、155ccの使いやすい範囲があります。
250ccには、250ccの余裕があります。
大型には、大型の大きな世界があります。
問題は、それが自分の走る道に合っているかどうかです。
街中なのか。
通勤なのか。
下道ツーリングなのか。
バイパスをよく使うのか。
高速道路をよく走るのか。
長距離を走るのか。
ワインディングを楽しむのか。
そこによって、ちょうどいい排気量は変わります。
小さいから下ではない
小排気量車は、どうしても「下のクラス」と見られがちです。
でも、楽しさという意味では、決して下ではありません。
むしろ、バイクの基本的な楽しさを感じやすい場面もあります。
エンジンを使う。
アクセルを開ける。
ギアを選ぶ。
車体を操る。
速度を乗せる。
流れを作る。
そういうことを、道路のスケールの中で楽しみやすい。
これは小排気量ならではの魅力です。
楽に移動したいなら、大きい排気量の余裕は魅力です。
でも、スポーツとしてバイクを楽しみたいなら、適度に操作し、適度に忙しく、適度に疲れるくらいが楽しいこともあります。
125ccには、その「適度な疲労感」があります。
体も頭も少し使う。
でも、扱いきれないほどではない。
頑張った分だけ気持ちよく走る。
そこが楽しいのです。
乗るまでのハードルが低いことも大事
小さい排気量の良さは、走っている時だけではありません。
駐車場から出すのが楽。
取り回しが楽。
車検がない。
維持費も比較的抑えやすい。
ちょっと乗ろうと思った時に出しやすい。
この「乗るまでのハードルが低い」というのは、実はかなり大きいと思います。
どんなに素晴らしいバイクでも、出すのが面倒になると乗る回数が減ります。
気軽に出せる。
気軽に乗れる。
気軽に楽しめる。
結果的に、たくさん乗る。
たくさん乗るから、もっと楽しくなる。
これも小排気量車の強さです。
大は小を兼ねる、とは限らない
バイクでは「大は小を兼ねる」と思われがちです。
でも、実際にはそうとも限りません。
大きいバイクには、大きいバイクの楽しさがあります。
小さいバイクには、小さいバイクの楽しさがあります。
大型の余裕が好きな人もいます。
小排気量を回して走るのが好きな人もいます。
250ccくらいのバランスが好きな人もいます。
155ccの使い勝手がちょうどいい人もいます。
どれが正解という話ではありません。
ただ、排気量が大きいほど楽しいとは限らない。
ここは、バイク選びで一度考えてみてもいいところだと思います。
速いバイクではなく、使えるバイク
速いバイクは魅力的です。
馬力のあるバイクにも憧れます。
大きなバイクに乗る満足感もあります。
でも、本当に楽しいのは、自分が気持ちよく使えるバイクかもしれません。
回せる。
開けられる。
ギアを選べる。
エンジンの変化を感じられる。
自分の操作で、バイクの表情を引き出せる。
そういうバイクは、排気量に関係なく楽しいです。
125ccだから楽しい。
155ccだからちょうどいい。
250ccだから使いやすい。
大型だから余裕がある。
それぞれに意味があります。
バイク選びは、「何ccが上か」ではなく、
「自分の走る道で、どの速度域が一番楽しいか」
を考えることなのかもしれません。
大きいバイクも楽しい。
小さいバイクも楽しい。
でも、小さいからこそ味わえる楽しさは、確かにあります。