バイク用品なぜ「最強のバイク用グローブ」は存在しないのか

操作性、防護性、防寒性――用途によって変わるグローブ選び

バイクに乗るなら、グローブを着けたほうがよい。

それは、多くのライダーが分かっていることだと思います。

では、どんなグローブを選べばよいのでしょうか。

安全性が高く、暖かく、しかも薄くて動かしやすいもの。

そんなグローブがあれば理想ですが、実際にはなかなかありません。

転倒時の安全性を高めようとすれば、厚く、硬くなる。
操作性を求めれば、薄く、柔らかくなる。
防寒性を高めれば中綿が増え、指先の感覚が遠くなる。

バイク用グローブは、

操作性、防護性、防寒性

という、同時には満たしにくい性能のバランスを取って作られている用品なのです。

素手で乗るのは、なぜ危険なのか

素手でハンドルを握れば、グリップやレバーの感触は直接伝わります。

しかし、防護性と防寒性は、ほぼゼロです。

転倒した瞬間、人は無意識に手を出すことがあります。

自分では手をつかないつもりでも、身体が倒れれば、手のひらや指が路面に接触する可能性があります。

舗装路は、低い速度であっても皮膚を簡単に傷つけます。さらに、指が路面に引っ掛かったり、バイクと地面の間に挟まれたりすれば、擦り傷だけでは済まないこともあります。

特に指は細く、転倒時に開いたり、ねじれたり、巻き込まれたりしやすい部分です。

また、素手が必ずしも最も操作しやすいとも限りません。

暑い日は汗でグリップが滑りやすくなり、滑らないように無意識に強く握ってしまいます。

寒い日は指がかじかみ、ブレーキやクラッチの操作が遅れます。飛び石や虫が手に当たれば、その痛みで一瞬ハンドルから力が抜けることもあります。

素手は感触こそ直接的ですが、その操作性を安定して保てるとは限らないのです。

安全性を考えれば、素手でバイクに乗ることは避けるべきだと思います。

グローブを着けると、操作性がよくなることもある

グローブは、手を守るだけの防具ではありません。

自分の手に合ったグローブは、グリップを適正な力で握り、アクセルやレバーを正確に操作するための用品でもあります。

手のひらに適度な摩擦があれば、滑らないように強く握り続ける必要がありません。

汗を吸収し、グリップとの摩擦を安定させることで、余計な握力を使わずに済むこともあります。

指先に滑り止めがあれば、クラッチやブレーキレバーに掛けた指も滑りにくくなります。

ただし、グローブなら何でも操作しやすくなるわけではありません。

サイズが大きくて指先が余る。
手のひらに生地が寄る。
縫い目がグリップに当たる。
プロテクターが関節の位置と合わない。
中綿が厚すぎて指を曲げにくい。

このようなグローブでは、かえってグリップを強く握ることになり、アクセルやレバーの感覚も分かりにくくなります。

グローブを選ぶときは、手にはめて眺めるだけでなく、実際にグリップを握る形にして確認することが大切です。

オフロードグローブは、操作性を最優先する

最近のオフロードグローブは、手の甲側のプロテクターが薄いものや、ほとんど付いていないものが多くなりました。

アクセル、クラッチ、フロントブレーキを頻繁に細かく操作するため、指の動かしやすさやグリップの感触を優先しているのでしょう。

実際に使ってみても、薄いグローブは非常に操作しやすいです。

素手に近い感覚でグリップを握ることができ、クラッチやブレーキも細かく操作できます。

しかし、オフロード走行では、前を走るバイクから石が飛んできます。

特に4サイクルの大排気量車は、リアタイヤが土や石をものすごい勢いで巻き上げます。

手の甲にまともに当たれば、かなりの衝撃です。場合によっては、骨折することも珍しくないと聞きます。

操作性を考えれば、薄いほうがよい。
しかし、飛び石から手を守るにはプロテクターが欲しい。

オフロードグローブにも、防護性と操作性の難しいバランスがあります。

手にマメができやすい人は、手のひら側も重要

私は手にマメができやすいため、手の甲側だけでなく、手のひら側の素材も気になります。

手のひらの生地が薄ければ、グリップの感触はよく伝わります。

一方で、薄すぎたり、グリップとの相性が悪かったりすると、長時間走ったときに手の皮が擦れ、マメができやすくなります。

反対に、手のひらのパッドが厚すぎたり、生地が内部で動いたりすると、今度はグリップを強く握ることになります。

特にモトクロスやエンデューロでは、走行中の汗でグローブが湿ることも、マメができる原因になります。

汗で手のひらの皮膚がふやけた状態で、アクセルやクラッチを繰り返し操作すると、皮膚が擦れやすくなります。

長時間走るエンデューロでは、最初は小さな違和感だったものが次第に痛みへ変わり、正しくグリップを握れなくなることもあります。

そのため、休憩中に乾いたグローブへ交換すると、マメの発生を最小限に抑えやすくなります。

予備のグローブを何組か用意したり、ベビーパウダーなどを併用したりすることもあります。

グローブを交換するのは、単に気持ちよく走るためだけではありません。

手の痛みによって余計な力が入り、操作性が落ちることを防ぐ意味もあります。

私にとってオフロードグローブ選びは、単に薄くて動きやすいかどうかだけではありません。

手のひらの素材、縫い目の位置、生地の滑りにくさ、汗を含んだときの感触も重要です。

泥だらけのレースでは、軍手が滑りにくいこともあった

雨のレースで、路面も車体も泥だらけになるような状況では、あえて軍手を使ったこともありました。

通常のグローブは、水や泥が表面に付着すると、グリップの上で滑ることがあります。

その点、軍手は水や泥を吸い込むため、濡れた状態でも意外とグリップに食いつき、かえって滑りにくく感じることがありました。

もちろん、軍手には転倒時の防護性がほとんどありません。

現在の感覚で、一般のライダーに勧められる装備ではありません。

ただ、雨のオフロードレースでは、手を守ることだけでなく、泥の付いたグリップを確実に握り続けることも重要でした。

ライダーによっては、腰のあたりにスペアの軍手を差しておき、水や泥を含んで使いにくくなったら、レース中に新しいものへ交換していました。

高価で高性能な用品が、どのような状況でも最も使いやすいとは限りません。

汗、水、泥によってグローブの状態が変われば、操作性も変わります。

乾いた状態で操作しやすいグローブでも、汗で湿ればマメができやすくなり、泥を含めばグリップが滑ることがあります。

グローブそのものの性能だけでなく、走行中にどのような状態になるのかまで考える必要があるのです。

メッシュグローブは、涼しくて洗いやすい

夏場のメッシュグローブは、やはり涼しいです。

走行風が通り、汗もこもりにくいため、暑い時期には大きな違いを感じます。

オフロードグローブにも共通しますが、汚れたり汗をかいたりしたときに、気軽に洗濯できることも利点です。

レザーグローブのように、濡らした後の乾燥や手入れを神経質に考えなくてもよいため、日常的に使いやすいと思います。

一方で、耐久性はそれなりです。

使い方にもよりますが、1~2年ほど使うと、指先が破れたり、縫い目がほつれたりすることがあります。

ただし、価格もレザーグローブほど高くないものが多いため、私はある程度は消耗品だと考えています。

涼しい。
洗いやすい。
気軽に使える。

その代わり、長期間使える耐久性や、厚いレザーのような防護性までは求めない。

メッシュグローブは、そうした割り切りで使う用品だと思います。

レザーグローブは、防護性とのバランスがよい

レザーグローブは、摩擦への強さと、手へのなじみやすさを両立しやすいタイプです。

最初は少し硬く感じても、使い込むことで手の形になじみ、操作しやすくなるものもあります。

手のひら、手の甲、ナックルなどに必要な補強を持たせながら、レース用ほど重く、硬くしない。

そのため、公道を中心に走るライダーにとっては、操作性と防護性のバランスを取りやすいタイプだと思います。

ただし、同じレザーグローブでも、薄手の街乗り用と、本格的なスポーツ走行用では防護性が大きく異なります。

革でできているから安全、という単純な話ではありません。

手首までしっかり覆っているか。
手首を固定するベルトがあるか。
手のひらやナックルが補強されているか。

そうした構造にも違いがあります。

ロードレース用は、舗装路での転倒を考えている

ロードレース用グローブは、舗装路の上を滑ることを想定し、防護性を高めています。

厚いレザー、ナックルプロテクター、手のひらや指の補強、長いカフ、手首を固定するベルトなどが装備されています。

製品によっては、小指と薬指がつながった構造になっています。

転倒して滑った際に、小指だけが大きく開いたり、路面に巻き込まれたりするのを抑えるためです。

手のひらの外側に硬いスライダーを備え、手をついたときに路面へ引っ掛かりにくくしているものもあります。

その代わり、街乗り用やモトクロス用と比べれば、重く、硬く、暑くなります。

防護性を高めるほど指は動かしにくくなるため、指をあらかじめ曲げた形にしたり、関節部分に伸縮素材を使ったりして、操作性を確保する工夫がされています。

ロードレース用グローブは、

操作性を多少犠牲にしてでも、舗装路での転倒に備えたグローブ

といえるでしょう。

冬用グローブは、防寒性を最優先する

冬用グローブは、冬のツーリングでは必ず使います。

中綿が厚いため、薄いグローブと比べると、確かに指は動かしにくくなります。

アクセルやレバーの感触も遠くなり、極端に言えば、鍋つかみでハンドルを握っているような感覚です。

ただ、冬のツーリングでは、暖かい時期のスポーツ走行のように、ダイナミックに攻めることはあまりありません。

寒さに耐えながら、先の目的地を目指して走る。

私の場合は、そのような走り方になるため、多少指が動かしにくくても、それほど困りません。

それよりも、指先が冷えて感覚を失うほうが問題です。

寒さで指が動かなくなれば、ブレーキやクラッチの操作そのものが難しくなります。

冬用グローブでは、操作感を多少犠牲にしてでも、どれだけ寒さをしのげるかを重視しています。

グリップヒーターやハンドガード、ハンドルカバーなどを併用すれば、グローブを必要以上に厚くせずに済みます。

それでも、冬の長距離ツーリングでは、私にとって防寒性が最優先です。

防水グローブは、雨による冷えを防ぐ

雨の日は、手が濡れるだけでなく、走行風によって急速に冷えます。

指が冷えれば感覚が鈍くなり、ブレーキやクラッチ、スイッチ類の操作にも影響します。

防水グローブは、単に不快感を減らすだけでなく、手の温度と操作能力を保つための用品でもあります。

ただし、防水膜や裏地が入ることで、薄手のグローブよりもグリップの感触は遠くなりがちです。

脱ぐときに内側の生地が指と一緒に抜けたり、手のひらで表地と裏地がずれたりするものもあります。

防水性だけでなく、濡れた状態でも指を動かしやすいか、グリップを握ったときに内部がずれないかも大切です。

一双ですべてをまかなうのは難しい

実際に使い分けてみると、すべての場面で優れているグローブはないと感じます。

オフロードでは、細かく素早い操作ができること。
夏の街乗りでは、涼しく、洗いやすいこと。
ロードスポーツでは、舗装路で転倒した際の防護性があること。
雨の日には、手を濡らさず冷やさないこと。
冬のツーリングでは、指先の温度を保てること。

用途が違えば、必要な性能も変わります。

薄いから危険、厚いから安全という単純な話でもありません。

厚すぎてレバー操作が遅れたり、サイズが合わずにグリップを強く握ったりすれば、それも安全な状態とはいえません。

グローブは、手を守るための防具であると同時に、バイクを正確に操作するための用品です。

どこを走るのか。
どのような速度で走るのか。
暑いのか、寒いのか。
雨や泥の中を走るのか。
どの程度の操作性が必要なのか。

その条件によって、優先すべき性能は変わります。

グローブ選びは、単に着けるか、着けないかの話ではありません。

何から手を守り、何を優先し、どこまで操作性を残すのか。

自分の用途に合ったグローブを選び、必要であれば季節や走る場所によって使い分ける。

さらに、長時間のオフロード走行では、予備を用意して途中で交換する。

それが、安全性と操作性を両立させる現実的な方法なのだと思います。

皆さんはグローブを選ぶとき、操作性、防護性、防寒性のうち、どれを最も重視していますか。

また、これまで使った中で、

「これは操作しやすかった」
「暖かいけれど動かしにくかった」
「気に入っていたけれど、すぐに破れた」
「意外なものが使いやすかった」

など、印象に残っているグローブはあるでしょうか。