
125ccのスクーターを選ぶとき、何を基準にするでしょうか。
燃費。
収納。
価格。
装備。
走り。
もちろん、どれも大切です。
私たちバイク屋も新しいモデルが出ると、つい
「何馬力あるのか」
「どんな装備が付いているのか」
「他の車種と比べてどうなのか」
そんなところから見てしまいます。
でも今回、日本に導入されたヤマハの「Fazzio(ファツィオ)」を見ていると、少し違うことを考えさせられます。
もしかすると、バイクを買う理由って、そんなに難しく考えなくてもいいのではないか。
Fazzioは、そんなことを感じさせる125ccスクーターです。
そもそもFazzioとは?
Fazzioは124ccの原付二種スクーターです。
2026年4月24日に日本で発売されました。
ヤマハが掲げているコンセプトは、
「Simple & Casual Mover as a Lifestyle-wear」
ヤマハ自身はこれを、「機能性とファッション性を兼ね備えた、普段着のようなシンプルでカジュアルな移動具」と説明しています。ヤマハ発動機株式会社
この言葉が、Fazzioというバイクをかなりよく表していると思います。
バイクに自分を合わせるというより、
自分の生活の中に、自然にバイクを入れる。
そんな発想です。
ヤマハの125ccスクーターとしては、少し違う方向
これまでヤマハの原付二種スクーターは、比較的スポーティなモデルが中心でした。
NMAXなどは、その代表でしょう。
走りもしっかりしていて、デザインにもスポーティさがあります。
一方、Fazzioを見たときに最初に感じるのは、
「速そう」
ではないと思います。
かわいい。
シンプル。
ちょっとおしゃれ。
これなら気軽に乗れそう。
そんな印象ではないでしょうか。
ヤマハ自身もFazzioを「スタイリングを重視したファッションスクーター」として企画したと説明しています。ヤマハ発動機株式会社
つまりFazzioは、
「すでにバイクが好きな人に、さらに高性能なバイクを」
という方向だけではない。
これまでそれほどバイクに興味がなかった人にも、
「これなら乗ってみたい」
と思ってもらうためのスクーターなのだと思います。
バイクは「性能が高いほど欲しくなる」とは限らない
バイク好きになるほど、どうしても性能を見ます。
馬力。
ブレーキ。
サスペンション。
電子制御。
私自身、モトクロスやサーキットを走るので、そういう部分にはとても興味があります。
でも、世の中の人全員がそこを求めているわけではありません。
例えば服を買うとき。
最高性能だから選ぶとは限りません。
靴もそうでしょう。
素材が一番優れているから。
機能性が世界最高だから。
それだけで選ぶ人ばかりではありません。
「これ好きだな」
「この色がいいな」
「自分に合いそう」
それで十分だったりします。
Fazzioが目指しているのは、そういうバイクなのではないでしょうか。
97kgという軽さは、日常ではかなり大きい
Fazzioの車両重量は97kgです。ヤマハ発動機株式会社
ここで言いたいのは、
「軽いから峠で速い」
という話ではありません。
朝、家から出す。
駐輪場から押し出す。
コンビニで向きを変える。
スーパーの駐輪場へ入れる。
帰宅して車庫へしまう。
こういうところです。
バイクというと、どうしても走っているときの性能ばかり考えます。
でも日常で使うバイクほど、
押す。
出す。
停める。
向きを変える。
そういう場面が多い。
そこで97kgという軽さは、かなり大きな価値になります。
ヤマハもFazzioについて「押し歩きしやすい97kgの軽量ボディ」と説明しています。ヤマハ発動機株式会社
これも立派な性能です。
シート高765mm、日本向けにシートも設計
Fazzioのシート高は765mm。
さらに日本仕様では、日本専用に設計されたシートが採用されています。ヤマハ発動機株式会社
シート高の数字だけで足つきがすべて決まるわけではありませんが、Fazzioでは足を下ろしやすいフートボード端の形状なども含めて考えられています。
毎日の信号待ち。
駐輪。
押し引き。
そういうところで不安が少ない。
普段使いのスクーターでは、こういう部分の方が大事な人も多いでしょう。
Fazzioの「ハイブリッド」は、少し意味が違う
Fazzioには「パワーアシスト機能」があります。
ここも面白いところです。
ハイブリッドと聞くと、四輪車のようにエンジンとモーターを使い分けて走るものを想像するかもしれません。
Fazzioはそういう仕組みではありません。
エンジン始動用モーターと発電機を一体化した「Smart Motor Generator」を使い、発進するときにモーターがエンジンを助けます。
停車状態からスロットルを大きく、または素早く開けると、最大約3秒間、駆動力をアシストします。
ヤマハの国内モデルとしては、このパワーアシスト機能はFazzioが初採用です。ヤマハ発動機株式会社
いつも大きなパワーが必要なわけではない
125ccで街中を走るとき、常に大きなパワーが必要でしょうか。
実際には、そうでもありません。
一定速度で走っているときには、それほど大きな力はいらない。
でも、
信号から発進するとき。
上り坂から出るとき。
二人乗りするとき。
こういう瞬間には、
「あと少し力があれば」
と思うことがあります。
そこでモーターに少し手伝ってもらう。
いつでも大きなパワーを持たせるのではなく、
必要な瞬間だけ助ける。
この考え方は、Fazzioというバイクにとても合っていると思います。
「速くする技術」ではなく「困るところを助ける技術」
最近のバイクの技術を見ていると、
ただ速くするためだけのものではなくなってきました。
ABS。
トラクションコントロール。
電子制御。
Y-AMTなどもそうです。
人間が苦手なところ。
疲れるところ。
失敗しやすいところ。
そこを機械が少し手伝う。
Fazzioのパワーアシストも、その延長にあるように思います。
125ccのスクーターを猛烈に速くするのではなく、
発進時の一番力が欲しいところだけ助ける。
それで十分。
そんな考え方です。
信号待ちではエンジンを止める
Fazzioには「Stop & Start System」も装備されています。
信号待ちなどで条件が整うと自動でアイドリングを停止し、スロットル操作で再始動。
ヤマハによれば、このシステムによって約3%の燃費向上を実現しています。ヤマハ発動機株式会社
さらにSmart Motor Generatorを使うため、再始動時も従来のセルモーターのような「キュルキュル」という音がありません。
毎日使うスクーターだから、
少し静か。
少し燃費が良い。
少し楽。
こういう「少し」の積み重ねが大事なのだと思います。
見た目はシンプル。でも、よく見るとかなり考えられている
Fazzioのデザインコンセプトは、
「Hello, Simple」。
ヘッドライト。
テールランプ。
メーター。
さらにはフックまで、楕円形をモチーフにデザインされています。
ただし、車体全体はあえてシンプル。
そこには、オーナー自身が手を加えたり、自分らしく使ったりできる「余白」を残す考え方があります。ヤマハ発動機株式会社
メーカーが、
「これが完成形です」
と全部決めてしまうのではなく、
「ここから自分のものにしてください」
という感じでしょうか。
これも今の時代らしいと思います。
色で印象がかなり変わる
Fazzioは全4色。
リーフグリーン。
ライトブルー。
パステルイエロー。
ブラックです。ヤマハ発動機株式会社
実車を見ると、色によってかなり印象が変わります。
パステルイエローなら柔らかく、少しレトロな感じ。
リーフグリーンは落ち着いた雰囲気。
ブラックになると、同じFazzioでもグッと引き締まって見えます。
このあたりも、
「スペックでどれが上か」
ではなく、
「自分はどれが好きか」
で選んでいいバイクなのでしょう。
「バイクに合わせる」のではなく「自分の生活に合わせる」
昔は、
バイクを買ったらツーリングへ行く。
峠へ行く。
カスタムする。
そんなふうに、
バイクを中心に生活が動くことも多かったように思います。
もちろん、それは今でも楽しい。
私自身も、そういうバイクの楽しみ方をしています。
でもFazzioは少し違います。
自分の生活が先にある。
仕事へ行く。
学校へ行く。
買い物へ行く。
友達に会いに行く。
カフェへ行く。
その中にFazzioが入ってくる。
主役はバイクではなく、その人の生活。
そういう考え方なのかもしれません。
若い人だけのスクーターでもない
Fazzioを見ると、
「若い人向けでしょう?」
と思う人もいるかもしれません。
もちろん若い人にもよく似合うと思います。
でも、それだけではないでしょう。
大型バイクは持っている。
でも、ちょっと近所へ出るのに毎回大きなバイクを出すのは面倒。
車を出すほどではない。
歩くにはちょっと遠い。
そんな人にも97kgの125ccは面白いと思います。
若い人にとっては最初の一台。
長くバイクに乗ってきた人には、生活の中で使うもう一台。
同じFazzioでも、選ぶ理由は人それぞれでいいのです。
そもそも、バイクを買うのに立派な理由はいらない
私たちは長くバイク業界にいるので、
バイクを買う理由をつい難しく考えてしまいます。
ツーリングしたい。
速く走りたい。
林道を走りたい。
サーキットへ行きたい。
そういう明確な目的がないといけないような気がしてしまう。
でも本当は、
「見た目が好き」
でもいい。
「この色がかわいい」
でもいい。
「通勤が少し楽しくなりそう」
でもいい。
「これなら気軽に乗れそう」
でもいい。
むしろ最初の一台なら、そのくらいの方が自然なのかもしれません。
高性能なバイクだけが「良いバイク」ではない
もちろん、高性能なバイクには高性能なバイクの楽しさがあります。
私も大好きです。
でも、
300km/h近く出るバイクと、
街中を50km/hで走る125cc。
どちらが優れているか。
そんな比較には、あまり意味がありません。
使う人にとって、
出すのが億劫にならない。
扱いやすい。
軽い。
気軽に乗れる。
乗るたびにちょっと気分がいい。
それも十分に「良いバイク」の条件だと思います。
「まだバイク好きではない人」に選んでもらえるか
私はFazzioを見ていて、ここが一番興味深いと思っています。
今いるバイク好きに、
もっと速いバイク。
もっと高性能なバイク。
もっと装備の良いバイク。
を届けることも、もちろん大切です。
でもバイクの世界を広げるためには、
「まだバイク好きではない人」
にも、
「これなら乗ってみたい」
と思ってもらう必要があります。
Fazzioは、その入口になることをかなり意識したスクーターなのではないでしょうか。
日常を少しだけ楽しくする
最高速が何km/hなのか。
何馬力なのか。
0-100km/hが何秒なのか。
Fazzioを語るとき、それはあまり重要ではない気がします。
朝、家から出したとき。
信号から発進したとき。
コンビニへ寄ったとき。
仕事から帰るとき。
いつもの道を走ったとき。
「あ、このバイクちょっといいな」
そう思える。
それで十分なのではないでしょうか。
バイクは必ずしも、
人生を変えるほど大げさな趣味でなくてもいい。
毎日の移動を、ほんの少し楽しくする。
好きな服を着る。
好きな靴を履く。
それと同じくらい自然に、
好きなスクーターに乗る。
Fazzioを見ていると、
ヤマハが日本に持ってきたかったのは、
単なる新しい125ccスクーターだけではなく、
そんなバイクとの付き合い方なのかもしれません。
今なら全カラーを店頭で見比べられます
そしてFazzioは、写真で見るのと実車を見るのとでは、けっこう印象が違います。
特に色。
ブラックを見るとかなり引き締まっていますし、
パステルイエローは柔らかい。
リーフグリーンもまた違った雰囲気です。
どれが一番いいかは、スペック表を見ても決まりません。
「自分ならこれかな」
で選んでもらうバイクだと思います。
現在YSP大分では、Fazzioの全カラーを店頭でご覧いただけます。
せっかく全色揃っている今なら、実際に並べて見比べていただけます。
車体の大きさ。
97kgという軽さ。
シートに座った感じ。
そして、写真ではなかなか分からない色合い。
ぜひ実車で確かめてみてください。
「まだ買うかどうか分からないけど、ちょっと見てみたい」
もちろん、それでも大丈夫です。
Fazzioは、たぶんスペック表とにらめっこするより、
実物を見て、
「これ、なんかいいな」
から始まるスクーターだと思います。