レース大きいバイクを買えば、バイクは上手くなるのか

今回は85ccのモトクロッサーの話です。

でも、大型バイクに乗っている人にも、125や250に乗っている人にも、たぶん少し関係があります。

昔モトクロスやった人なら、なるほどそうよね、と思う話かもしれません。

バイクは、大きい方が本格的に見える。

排気量が大きい方が上級者っぽい。
高性能な方が長く乗れる。
どうせ買うなら、最初からいいものを。

バイクを選ぶ時、そんな考え方をする人は多いと思います。

もちろん、憧れのバイクを買うのも立派な楽しみ方です。

でも、

「バイクが上手くなりたい」

となると、少し話は変わってくるのではないでしょうか。

自分に合うバイクとは、本当に大きくて高性能なバイクなのか。

それとも、

今の自分が思い切って操作できるバイクなのか。

モトクロスを見ていると、その違いがものすごく分かりやすく出ます。

モトクロスを始めると、なぜか最初からフルサイズ

モトクロスを始めたい。

そういう方と話していると、最初から250Fなどのフルサイズを考えている人がけっこう多いように感じます。

大人だから250。
どうせ買うならフルサイズ。
85なんて子ども用でしょう。

もちろん、大きいバイクが欲しいなら止めるつもりはありません。

250Fが欲しい。
450に乗りたい。

それも立派な理由です。

ただ、

「モトクロスが上手くなりたい」

ということを一番に考えるなら、本当にそこからでいいのかな、と昔から思っていました。

「足が届かないんです」と言いながらフルサイズを選ぶ

フルサイズに乗りたいという人から、

「でも足が届くか心配なんですよね」

と言われることがあります。

だったら、最初は85LWくらいからでもいいんじゃないか。

私はそう思います。

これ、公道で例えれば、免許を取って最初から大きな大型バイクに乗るのと少し似ています。

もちろん乗れます。

でも、

大きい。
重い。
パワーがある。

それだけで、初心者は「どう操るか」より先に、

「怖くないように乗る」

ことに意識を使ってしまうことがあります。

モトクロスでも同じです。

足が届かない。
車体が大きい。
転ばせたくない。
アクセルを開けるのが怖い。

そうなると、本来最初に覚えたいことが後回しになります。

小さいバイクだからこそ、操作をごまかせない

85のいいところは、単に軽いことだけではありません。

軽いので、何回転んでも比較的簡単に起こせます。

初心者なら転ぶでしょう。

でも、

転ぶ。
起こす。
またやる。

これを何回でも繰り返しやすい。

練習では、これはかなり大きなメリットです。

一方で、85は小排気量の高回転型です。

適当に走ると、すぐ失速します。

ラインが悪い。
コーナーで速度を落としすぎる。
ギアが合っていない。
アクセルを開けるのが遅い。

そうすると、前に出てくれません。

だから嫌でも考えます。

「今のは止まりすぎたな」
「こっちのラインじゃないな」
「一つギアを落としておこう」
「もっと早く向きを変えないと」
「ここから開けないと次につながらない」

つまり、

バイクが乗り方の間違いを教えてくれるんです。

大きい排気量は、間違っていても先へ進める

対して250Fや450Fはモトクロス仕様でも、エンデューロ仕様でもトルクがあります。

コーナーで止まりすぎても、
ギアが少しくらい合っていなくても、
ラインを外しても、

アクセルを開ければ、ある程度先へ進めます。

これは性能の高さでもあります。

でも初心者にとっては、少し厄介でもあります。

本当は乗り方が合っていないのに、

「ちゃんと走れている」

と感じやすいからです。

コーナーごとに大きく失速する。
向きが変わってからアクセルを開ける。
トルクで加速する。

それでも一周はできます。

それを何年も繰り返せば、それが自分にとっての普通の乗り方になってしまいます。

だから、

「何年もやっているのに、なぜかあまり上手くならない」

ということが起きる。

乗っている年数と、正しい練習をした時間は、必ずしも同じではないんですよね。

これは公道でも少し似ていると思う

この話、モトクロスだけではないと思っています。

例えば125や250くらいのバイク。

「遅いから初心者用」

と見られがちです。

でも小排気量ほど、

どこで減速するか。
どこまで速度を残すか。
何速を使うか。
どこからアクセルを開けるか。

そういう操作の違いが走りに出やすい。

一方、大排気量なら多少ギアが違っても、アクセルを開ければ前へ出る。

高速道路や長距離では、その余裕が大きなメリットになります。

だから大排気量が悪いという話ではありません。

ただ、

「大きいバイクの方が練習になる」

とは限らないんですよね。

小さい排気量を気持ちよく走らせられる人は、大きいバイクに乗っても意外と自然に乗れます。

でも、大きいバイクのトルクだけで何となく走っていた人が小さいバイクに乗ると、

「あれ、全然走らない」

となることがある。

そこで初めて、自分がどれだけバイクの性能に助けてもらっていたか分かることもあります。

大きいバイクなのに遅い。小さいバイクなのに速い

モトクロスコースでは、面白いことが起きます。

「250や450に乗っているのに、なんであんなに遅いんだろう?」

逆に、

「あんな小さい85で、なんであんなに速いんだろう?」

そんな場面があります。

250や450に乗っている大人が85に一度抜かれるくらいなら、まだあります。

自分が3周する間に、その85に2回抜かれる。

そんなことだって普通にいくらでもあります。

そこまでいくと、もう排気量の問題ではありません。

85で速い人は、

速度を残して、
ラインを作り、
ギアを合わせ、
早く向きを変え、
アクセルを開け、
次の区間へ速度をつないでいます。

つまり、コース全体を走っている。

逆に大きいバイクに乗っていても、毎コーナーで止まって、そこからパワーで加速していれば、意外と速くありません。

排気量が速さを決めているわけではない。

バイクをどれだけ使えているか。

そこなんですよね。

「85じゃパワーが足りない」と言うけれど

85を勧めると、

「でも85じゃパワーが足りないでしょう」

と言われることがあります。

その時、私は思います。

では、その85を一周きっちり使い切れるでしょうか。

ストレートで一瞬全開にするという話ではありません。

コーナーへきちんと入る。
速度を残す。
ギアを合わせる。
向きを変える。
早くアクセルを開ける。
次の区間まで速度をつなぐ。

それを一周続ける。

これができるなら、かなり上手いと思います。

そこまでできてから、

「もう少しパワーが欲しい」

というなら、次を考えればいい。

85で覚えてから250に乗ると、むしろ楽になる

85で、

ラインを作る。
速度を残す。
ギアを合わせる。
荷重する。
早くアクセルを開ける。

これを覚えてから250Fに乗る。

すると、大きいバイクがむしろ楽に感じると思います。

多少回転が落ちてもトルクがある。
サスペンションにも余裕がある。
ギアの守備範囲も広い。

85で身につけたことを同じようにやれば、今度はバイクの方が助けてくれる。

だから、

小さいバイクから大きいバイクへ

は比較的自然なんです。

逆に、大きなバイクのトルクで何となく走ることに慣れてから85へ戻ると、

「なんで前に進まないんだ?」

となる。

そこで乗り方の粗さが見えてきます。

「身体が大きいから85は無理」は本当だろうか

これもよく聞きます。

「自分、身体が大きいんですよ」

もちろん、身長が2m近いような人なら話は別です。

でも一般的な成人男性くらいなら、

本当にバイクが小さすぎるのか。

それとも、自分のフォームが大きくなりすぎているのか。

そこは一度考えてみてもいいと思います。

モトクロスでは、身体をコンパクトにまとめることも技術です。

足首、膝、股関節を使って身体をまとめる。

そこから前後左右へ動く。

上手い人が85に乗ると、大人でも意外なくらいきれいに収まります。

小さいバイクに乗ると、フォームの雑さまで隠せない。

これもいい練習です。

昔は大人が80ccで普通にレースをしていた

私たちが若かったころは、大人が80ccでレースをすることは珍しくありませんでした。

80も当時はラージホイールなんてなくて、当然17、14インチホイールのスモールサイズです。

今、大分県内でバイク屋をやっている社長さんたちにも、当時80㏄でモトクロスレースに出ていた人が何人もいます。

軽トラックに80ccを3台積んで、九州中を転戦する。

そんな盛り上がっていた時代でした。

今ほどロードサーキットも身近ではありませんでしたから、

「レースするならモトクロスやろ」

という時代でもありました。

だから、あのころから乗っている人たちは、バイクを操るのが上手い。

そして乗るだけではありません。

レースでは突然トラブルが起きます。

レバーが曲がった。
チェーンがおかしい。
エンジンの調子がおかしい。
次のヒートまで時間がない。

その場で考えて、直して、また走る。

そんな経験をたくさんしています。

だからバイクそのものをよく分かっている人も多いんだと思います。

今の85LWは、昔の80よりずっと良くなっている

もちろん、今の85は昔の80より高価になりました。

でも、そのぶん良くなっています。

車体も足回りも進化して、ずっと乗りやすくなった。

特にLW、ラージホイール仕様なら、大人が練習に使うことも十分考えられるサイズです。

それなのに、

「85だから子ども用」

と最初から外してしまう。

これは少しもったいないと思います。

モトクロスは、積むところから始まっている

さらに現実的な話をすると、85は軽い。

軽バンにも積みやすい。

一人で積み降ろししやすい。
押し引きも楽。
洗車も楽。
整備のために動かすのも楽。

モトクロスは、

積む。
降ろす。
走る。
洗う。
整備する。
また積む。

そこまで全部含めて遊びです。

大きなバイクを買ったけれど、持っていくのが大仕事で月に一度しか乗らない。

それより、

「今日は行こう」

と気軽に85を積んで、何度も走る。

上達を考えれば、後者の方が有利なこともあります。

維持管理の負担も違ってきます。

初心者ほど、とにかく乗る回数を増やした方がいい。

ならば「続けやすい」というのも性能の一つではないでしょうか。

レースも、まず「競争を楽しめる速さ」でいい

もしレースに出たいなら、なおさら無理に大きなバイクから始めなくてもいいと思います。

大きなバイクで、

転ばないように。
ジャンプで失敗しないように。
後ろから来た人の邪魔にならないように。

そればかり考えて一周する。

それでは、せっかくレースに出てもあまり面白くないでしょう。

それより、

「あそこで少し早く開けよう」
「次はこのラインに行こう」
「前の人に追いつけそうだ」

そんなことを考えながら走る方が、ずっとレースらしい。

そして転倒するにしても、自分の技量に合った速度域で小さな失敗をたくさん経験する。

それも大切だと思います。

本当に選んでいるのは「自分に合うバイク」なのか

ここまで考えると、もう一つ見えてきます。

バイクを選ぶ時、

本当に「自分に何が合うか」を考えているのか。

それとも、

「そのバイクに乗っている自分が、どう見えるか」

を考えているのか。

フルサイズの方が玄人っぽい。
大排気量の方が格好いい。
ピックアップに積んだら映える。
これだけ高いバイクを買ったんだから、きっと楽しいし速く走れるはず。

趣味なので、それもいいと思います。

格好いいから買う。

私はそれを否定するつもりはありません。

公道を走るバイクなら、所有する喜びだって大事です。

眺めて楽しい。
磨いて楽しい。
ツーリング先に停めて眺める。

それも立派なバイクの楽しみ方です。

ただ、

「上手くなりたい」

となると話は少し違います。

モトクロスなら、最後はコースを走ります。

止まっている時より、走っている時の方がよく見える。

フルサイズを格好よく積んできても、コースではまったく扱えない。

その横を85が何度も抜いていく。

だったら私は、小さいバイクをきれいに走らせている人の方が格好いいと思います。

大きいバイクを買うな、という話ではない

どうしても250Fに乗りたい。

大型バイクに憧れている。

それなら買えばいいと思います。

欲しいものに乗るのも、バイクの大きな楽しみです。

ただ、

大きいバイクを買うことと、
早く上手くなることは、

必ずしも同じではありません。

これはモトクロスだけではなく、公道のバイクでも少し考えてみてもいいことだと思います。

自分は何がしたいのか。

所有したいのか。
旅をしたいのか。
速く走りたいのか。
上手くなりたいのか。
気軽に乗りたいのか。

目的が変われば、合うバイクも変わります。

排気量や価格が上がれば、自動的に自分に合うバイクになるわけではありません。

小さいバイクは「初心者用」だからいいのではない

私が85を勧めたいのは、

小さいから簡単だからでも、
子ども用だからでもありません。

むしろ逆です。

乗り方をごまかしてくれないからです。

軽いから、何度でも失敗できる。

でも雑に乗れば速くない。

ライン。
ギア。
アクセル。
荷重。
フォーム。

それをきちんと合わせないと前に進まない。

だからこそ、初心者のうちに覚えてほしいことを教えてくれる。

そして、それを覚えてから大きなバイクに乗れば、

「あれ? 大きいのに楽だな」

となる。

小さいバイクを上手く走らせることは、大きいバイクへ行くための我慢ではありません。

それ自体が、バイクを操る楽しさなんだと思います。

排気量を上げる前に、今のバイクを使えているか

これは公道でも同じかもしれません。

「もっと排気量が欲しい」
「もっとパワーが欲しい」
「もっと上のクラスに乗りたい」

もちろん、それも楽しい。

でもその前に、

今乗っているバイクを、自分はどれくらい使えているんだろう。

そんなふうに考えてみるのも面白いと思います。

小さいバイクをしっかり操れた経験は、大きなバイクへ行ってもなくなりません。

むしろ、大きなバイクの余裕をもっと感じられるようになるはずです。

85でパワーが足りない?

なるほど、だったらまず、その85を一周きっちり使い切ってみてください。

それができるようになったら、私はかなり褒めたいと思います。