スクーターが夏に開放感を感じやすいのは、構造的な理由があります

夏のバイクは、そもそも暑い
夏のバイクは暑いです。
ヘルメットは暑い。
信号待ちは暑い。
アスファルトからの照り返しも暑い。
ただ、それとは別に、バイクにはもうひとつ大きな暑さがあります。
それが、エンジンの熱です。
特に大排気量のバイクになると、この熱はかなり大きい。
エンジン、ラジエーター、エキパイ、フレームまわり。
それらの熱源が、ライダーのすぐ近くにあります。
極端に言えば、夏の大型バイクは、
大きなストーブを足の間に抱えて走っている
ようなものです。
走っている間はまだ風で逃げます。
でも、信号待ちや渋滞になると、その熱が一気にこもります。
足元。
内もも。
膝まわり。
シート下。
車種によっては、じわじわ焼かれるように感じることもあります。
数字で見ると、バイクの熱はかなり強烈
熱というのは、数字で見るとかなり強烈です。
バイクのマフラーまわりの温度は、一般的な目安として、エンジン付近のエキパイで700〜800℃、マフラーエンドでも100〜200℃程度になると紹介されています。もちろん、この温度がそのままライダーの足に当たるわけではありません。ただ、ライダーのすぐ近くに、それだけ高温の部品があるということです。
さらに、低温やけどについても注意が必要です。
NITE、独立行政法人製品評価技術基盤機構の注意喚起では、低温やけどは50℃で2〜3分、46℃で30分〜1時間、44℃で3〜4時間以上の接触で発症するとされています。
つまり、やけどというのは、何百度という高温に一瞬触れた時だけに起きるものではありません。
「ちょっと熱いな」
「でも我慢できるな」
そのくらいの温度でも、同じ場所に長く熱が当たり続ければ危険になることがあります。
夏の大型バイクで薄いパンツが危ないというのは、転倒時のケガだけの話ではありません。
エンジン、ラジエーター、エキパイの熱が近いというだけで、身体にはかなりの負担になります。
大型バイクは、熱源をまたいで乗っている
普通のバイク、とくに大排気量車は、エンジンをまたいで乗ります。
ライダーの足の間にエンジンがある。
内ももの近くにフレームやエンジンがある。
膝まわりにラジエーターやファンの熱が来ることもある。
下の方にはエキパイもあります。
もちろん車種によって熱の感じ方は違います。
排熱設計がうまいバイクもありますし、同じ排気量でも熱く感じる車種、意外と快適な車種があります。
ただ、大きな力を出すエンジンほど、基本的には大きな熱を生み出しやすい。
エンジンは、燃料を燃やして力を出します。
馬力を出すということは、それだけ燃料を燃やすということです。
そして、燃料のエネルギーがすべて走る力になるわけではありません。
一部は動力になり、残りの多くは熱になります。
排気熱。
冷却水の熱。
エンジン本体の熱。
ラジエーターファンから出る熱風。
大排気量、高出力のバイクほど、基本的には発生する熱も大きくなります。
バイクの場合、その熱源がライダーのすぐ近くにあります。
四輪ならボンネットの中にある熱源を、バイクでは足の間に抱えているようなものです。
だから夏の大型バイクが熱いのは、気のせいではありません。
しっかりした装備が、夏には少し重たくなる
大型バイクには大型バイクの良さがあります。
所有感もある。
高速道路での余裕もある。
走りの力強さもある。
きちんと装備して、きちんと乗る楽しさもあります。
ただ、これからの暑い季節になると、その「きちんと」が少し重たく感じる日もあります。
ジャケット。
グローブ。
ライディングパンツ。
ブーツ。
安全のためにも、見た目の意味でも、大型バイクに乗るなら、ある程度しっかりした装備で乗りたくなります。
それは大事なことですし、悪いことではありません。
でも、真夏の午後。
少し出かけたいだけの日。
近場を軽く流したい日。
山のほうへ涼みに行きたい日。
そういう時に、大型バイクとフル装備だけが正解かというと、そうではないと思います。
そこで、スクーターという選択肢
そこで、スクーターです。
スクーターは、夏に乗ると意外と開放感があります。
それは単に、操作が簡単だからではありません。
構造的に、普通のバイクと大きく違うからです。
普通のバイクは、エンジンをまたいで乗ります。
ライダーの足の間、股の下、膝の近くにエンジンがあります。
一方でスクーターは、多くの場合、エンジンが後ろにあります。
しかもカバーされています。
つまり、ライダーが直接エンジンをまたいでいない。
足元に大きな熱源がない。
内ももにエンジン熱が来にくい。
この差は、夏になるとかなり大きいです。
短パンTシャツで乗れてしまう理由
街中で、スクーターに短パン、Tシャツで乗っている人を見かけることがあります。
もちろん、安全面ではおすすめしません。
転べば肌は簡単に削れます。
小さなスクーターでも、路面は容赦してくれません。
ただ、なぜそういう格好で乗れてしまうのか。
その理由のひとつは、スクーターが普通のバイクほどエンジン熱を感じにくい構造だからです。
普通のバイクで短パンは、安全以前に、熱さでかなり厳しい車種もあります。
特に大排気量車では、エンジンや排気系の熱が足にかなり近い。
スクーターは、そこが違います。
エンジンが後ろにある。
カバーされている。
足元がフラットで、熱源から距離がある。
だから、夏の街乗りで感じる暑さの種類が違うのです。
TMAXのような大型スクーターでも、熱の感じ方は違う
もちろん、スクーターにもTMAXのような大型モデルはあります。
ですので、スクーターならすべて小排気量で熱くない、という話ではありません。
ただ、TMAXのような大型スクーターでも、普通の大型バイクとは熱の感じ方が違います。
排気量は大きくても、エンジンを直接またいで乗る構造ではありません。
熱源がライダーの内ももや股下にむき出しであるわけではなく、車体下部から後方に収まり、外装やフロアまわりで隔てられています。
つまり、発生する熱量はあっても、
ライダーに伝わる熱の位置が違う
ということです。
夏の快適さは、排気量だけでは決まりません。
エンジンの位置。
熱源との距離。
外装でどれだけ隔てられているか。
ラジエーターや排気系の熱が、どこへ抜けるか。
そこまで含めて考えると、スクーターが夏に開放感を感じやすい理由が見えてきます。
小排気量が多いことも、夏には利点になる
一般的に街中でよく使われているスクーターは、50cc、125cc、155cc、250ccあたりの比較的小排気量のものが多いです。
排気量が小さく、出力も控えめであれば、発生する熱量も大型バイクほど大きくなりにくい。
さらに、スクーターは走る場所も一般道中心になりやすい乗り物です。
街乗り。
通勤。
買い物。
近場のツーリング。
少し山のほうへ涼みに行く。
そういう使い方であれば、高速道路を長時間、高負荷で走り続ける場面も少ない。
発生する熱量も比較的少なく、なおかつ熱源がライダーから離れている。
この組み合わせは、夏にはかなり大きな利点になります。
ツーリングでも、1日乗ると疲れ方が違う
「スクーターは近所用」というイメージを持たれることもあります。
でも、夏のツーリングでは、この構造的な差がじわじわ効いてきます。
暑さは、ただ不快なだけではありません。
体力を削ります。
集中力も落とします。
判断力にも影響します。
信号待ちのたびに、足元や股の下から熱で炙られる。
渋滞で熱がこもる。
休憩しても、また走り出せば同じ。
それが一日続くと、かなり疲れます。
スクーターは、そのエンジン熱のストレスが少ない。
足元に熱源がない。
エンジンをまたがない。
街中の低速走行でも、普通のバイクほど股下から熱が上がってくる感じが少ない。
これだけでも、一日乗った時の疲れ方は変わります。
もちろん、真夏に何に乗っても暑いです。
スクーターなら涼しい、というほど甘くはありません。
ヘルメットは暑い。
日差しは強い。
路面からの照り返しもあります。
水分補給も必要です。
休憩も必要です。
でも、同じ暑い中でも、
エンジンに炙られる暑さが少ない
というのは大きい。
スクーターが夏に開放感を感じやすいのは、気分の問題だけではありません。
ちゃんと構造的な理由があります。
ただし、軽装でいいという話ではない
ここは誤解してほしくないところです。
スクーターは夏に乗りやすい。
普通のバイクほどエンジン熱を感じにくい。
足元に熱源がない。
だからといって、Tシャツ短パンで乗りましょう、という話ではありません。
転倒した時に肌が出ていると、ケガは大きくなります。
小さなスクーターでも、30km/h、50km/hで路面に触れれば、体へのダメージは相当なものです。
スクーターは気軽に乗れるからこそ、軽装になりやすい。
でも、そこは気をつけてほしいところです。
夏には夏の装備を選ぶ。
メッシュジャケット。
薄手のライディンググローブ。
通気性の良いパンツ。
くるぶしまで守れる靴。
水分補給。
日陰での休憩。
無理をしない時間帯選び。
暑さ対策をしたうえで、スクーターで出かける。
これが大事だと思います。
夏のスクーターツーリングは、気楽でいい
近場の海沿いを流す。
山のほうへ涼みに行く。
道の駅でソフトクリームを食べる。
朝早めに出て、暑くなりすぎる前に帰る。
あえて遠くへ行かず、近場をゆっくり楽しむ。
そういうツーリングも、かなりいいものです。
大型バイクで遠くまで走る日があっていい。
しっかり装備して、気合いを入れて走る日があっていい。
でも、夏にはスクーターで気軽に出かける日があってもいい。
メインバイクにする必要はありません。
大型バイクを手放しましょう、という話でもありません。
ただ、夏を快適に走るためのもう1台としてスクーターがあると、バイクの楽しみ方はかなり変わります。
大型バイクでしっかり走る日。
スクーターで気軽に涼みに行く日。
同じ「バイクに乗る」でも、楽しみ方が違います。
スクーターの開放感には理由がある
スクーターは、操作が簡単。
荷物が入る。
足元が楽。
街乗りに強い。
そういう便利さに目が行きがちですが、夏に関してはもうひとつ大きな魅力があります。
それが、
熱源からライダーが離れていること
です。
エンジンの位置。
カバーされた構造。
足元に熱源がないこと。
比較的小排気量の車種が多いこと。
一般道中心で高負荷が続きにくいこと。
これらが重なって、スクーターは夏の移動に向いた乗り物になります。
夏のバイクは暑い。
それは間違いありません。
でも、暑いから乗らない、では少しもったいない。
暑い季節には、暑い季節に合ったバイクの楽しみ方があります。
無理をしない。
装備を工夫する。
時間帯を選ぶ。
目的地を近くする。
そして、スクーターという選択肢を持つ。
スクーターが夏に開放感があるのは、ただ気軽だからではありません。
構造的に、夏に向いている理由があるからです。
これから暑くなる季節。
大型バイクで気合いを入れて走るのもいいですが、たまにはスクーターで、少し気楽に出かけてみてください。
いつもの道でも、少し違って見えるかもしれません。