バイク最近のバイクは、なぜハンドルが広い? ハンドル幅は体格だけで決まるのか

最近のバイク、とくにネイキッドモデルを見ていると、

「ハンドルがずいぶん広いな」

と感じることがあります。

昔のネイキッドと比べても、最近のモデルは横に広く、比較的フラットなハンドルを採用しているものが多い印象です。

そこで、

「これは体格の大きな外国人に合わせているんじゃないか」
「自分はそこまで身体が大きくないから、少し切って短くした方が乗りやすいのでは?」

と思う人もいるのではないでしょうか。

実際、ハンドルを少し短くして自分の体格に合わせたら乗りやすくなった、という方もいます。

それはもちろん十分あり得る話です。

ただ、私自身もモトクロッサーでは昔から何度も同じようなことを試してきました。

ごく最近でも、

「ちょっと広いかな」

と思って、ハンドルをサンダーで左右1cmくらいずつ切って試すことがあります。

ところが乗ってみると、どうも今ひとつしっくりこない。

結局、元に近い幅へ戻してしまう(切ったら戻せないから交換)

そんなことを何度かやっています。

そう考えると、ハンドル幅というのは単純に身長や肩幅だけで決めるものではないのではないか。

今回はそんな話です。

広いハンドルは、テコが効く

一番分かりやすいのは「テコ」です。

短いレンチより長いレンチの方が、小さい力でボルトを回せます。

バイクのハンドルも同じで、ステアリング軸からグリップまでの距離が長くなるほど、同じ力でも大きな操舵トルクを作れます。

ですから幅の広いハンドルは、

車体を倒し始める
左右へ切り返す
低速でハンドルを切る
フロントの動きを修正する

といった操作を、比較的小さい力で行いやすくなります。

ここだけ考えても、

「ハンドルが広い=大柄な人のため」

とは限らないことが分かります。

メーカーが狙っている操作感そのものに、ハンドル幅が関係しているわけです。

逆操舵だけの話ではない

ハンドル幅の話をすると、まず逆操舵が思い浮かびます。

走っているバイクを右へ倒すとき、きっかけとして右側のハンドルを前へ押す。

このとき幅の広いハンドルの方がテコが効くので、小さな力で倒し込みのきっかけを作りやすくなります。

ただ、今回あらためて考えてみると、幅広ハンドルの意味はそれだけではないように思います。

街中を走っていると、実際にはかなり「舵角」を使っています。

交差点の左折。
狭い道路の右折。
Uターン。
タイトなヘアピン。

速度が低く、旋回半径が小さくなるほど、車体を傾けるだけではなく、フロントタイヤにも実際の舵角がつきます。

このとき広いハンドルなら、軽い力でその舵角を作ることができます。

そして大事なのは、切るときだけではありません。

切ったハンドルを「戻す」ときにもテコは効く

たとえば交差点を左折するとします。

進入で車体を倒す。
旋回方向へフロントに舵角がつく。
向きが変わる。
出口へ向けてアクセルを開ける。
車体を起こしながら舵角を戻す。

この一連の動きの中で、ハンドルはただ一方向へ切れて終わりではありません。

舵角をつける。
必要な角度を保つ。
切れ込みすぎないように支える。
そして出口で戻す。

幅広ハンドルなら、そのどの場面でもテコを利用できます。

もちろん実際のバイクでは、キャスターやトレール、タイヤから受ける力などによって、フロントには自然に落ち着こうとする働きもあります。

しかしライダーは、それを完全にハンドル任せにしているわけではありません。

「もう少し切りたい」
「ここで止めたい」
「少し戻したい」

という微妙な調整を絶えず行っています。

幅広ハンドルは、そうしたステアリング操作全体を軽い力で行いやすくしているわけです。

広いハンドルは、手の移動量も大きくなる

もちろん、広ければ何でも良いという話でもありません。

幅が広くなると、同じ舵角をつけるためにグリップが動く距離は大きくなります。

つまり、

広いハンドル
=小さな力で操作できるが、腕は大きく動かす

狭いハンドル
=腕の動きは小さいが、同じ操舵トルクを出すには少し大きな力が必要

という関係になります。

これは、ある意味で人間側の「ステアリングのギヤ比」のようなものかもしれません。

幅広ハンドルは、少ない力を使って、比較的大きな手の動きで舵角を細かく調整する。

狭いハンドルは、手の動きはコンパクトですが、その分しっかり入力する必要がある。

だから単純に、

「小柄だから短い方がいい」

とはならないのでしょう。

モトクロッサーのハンドルが広い理由も、これで見えてくる

この話はモトクロスを考えると、さらに分かりやすいと思います。

モトクロッサーのハンドルが広い理由というと、

「ギャップでフロントが振られたときに抑えやすい」
「ジャンプの着地で暴れたときに対応しやすい」

といったことがまず思い浮かびます。

もちろんそれもあります。

でも実際にモトクロスを走っていると、それ以外にもかなり大きな舵角を使っています。

タイトターン。
轍。
低速コーナー。
ターン出口での加速。
前後輪が滑ったときの修正。

舗装路とは違い、土の上では前後輪が必ずしも同じ軌跡を走るわけではありません。

フロントに舵角をつけたり、戻したり、切れ込みを止めたり。

その変化もかなり大きい。

幅広ハンドルは、そうした

「大きく変化する舵角を積極的にコントロールする」

ことにも向いているのではないでしょうか。

そう考えると、私がモトクロッサーのハンドルを左右1cmずつ切っただけなのに、どうもしっくりこなかったことにも説明がつきます。

変わったのは、単に肩幅に対するグリップ位置だけではありません。

テコの効き方も変わる。
同じ舵角に対する手の移動量も変わる。
肘や手首の位置も変わる。
身体とバイクの間に作れる空間も変わる。

それら全部が少しずつ変わっていたのだと思います。

ヤマハのMTシリーズが「モタード的」なのも面白い

ここでヤマハのMTシリーズを考えると、話がつながってきます。

初代MT-09は、昔ながらのネイキッドというより、スーパーモタード的な考え方を取り入れたモデルとして登場しました。

街中などの日常的な速度域でも、

パッと倒す。
向きを変える。
舵角を使う。
起こして加速する。

そんな操作そのものを楽しませる方向です。

これは、サーキットの高速コーナーをセパハンで滑らかに走るイメージとは少し違います。

むしろ、

交差点。
タイトなワインディング。
小さなヘアピン。

極端に言えば、ジムカーナのようなタイトなコースを、

「次はこっち、今度は反対」

と積極的にバイクを動かして攻略していく感覚に近いところがあります。

そういう使い方なら、比較的広いハンドルには意味があります。

逆操舵で車体を倒すところから、

実際に舵角を使って向きを変え、

さらにその舵角を戻して次の動作へつなげる。

その一連の操作を、小さな力で行いやすいからです。

ヤマハのMT系で、

「車重の割に軽く感じる」
「街中でもヒラヒラ動く」

と感じる理由の一つには、こうしたハンドルの設定も関係しているのだと思います。

そう考えると、昔のネイキッドがもう少し狭かったのも面白い

昔のネイキッドを見ると、現在ほど横に大きく広がったハンドルは少なかったように思います。

昔ながらのロードバイクは、

自然な姿勢で乗り、
車体が持つ安定性や旋回性を使って走る。

そういう性格が強かった。

それに対して現在のストリートファイター的なネイキッドは、

ライダーが積極的に入力し、
車体を倒し、
向きを変え、
また起こす。

バイクを動かすこと自体を楽しませる方向が強くなっています。

同じ「ネイキッド」でも、バイクに求められる性格が変わってきた。

その結果として、ハンドル幅も広くなってきたのではないでしょうか。

そう考えれば、

「最近は外国人向けだから広い」

という説明だけでは足りない気がします。

もちろん、短くした方が合う人もいる

だからといって、

「純正の幅を絶対に変えてはいけない」

という話ではありません。

実際にハンドルを少し短くして、

「腕が楽になった」
「取り回ししやすくなった」
「自分にはこちらの方が合う」

という人もいます。

それなら、それがその人にとっての正解です。

特に小柄な人の場合、幅が広すぎるとフルロックしたときに外側の腕が伸びきってしまうことがあります。

そんな場合には、幅を少し詰めることで扱いやすくなることも十分あります。

ただ、

「自分は小柄だから短くすればいい」

だけでは判断できない。

ここが今回一番言いたいところです。

ハンドル交換で変わるのは、見た目やポジションだけではない

実際、お店でも、

「もう少し絞った形のハンドルにしたい」
「少し短くしたい」
「セパハンにしてみたい」

といったご相談はけっこうあります。

もちろん、それが悪いわけではありません。

見た目が好みになるのもカスタムの楽しさですし、体格や使い方によっては交換した方が乗りやすくなることもあります。

ただ、知っておいた方がいいのは、

ハンドルを変えると、変わるのは見た目や乗車姿勢だけではない

ということです。

幅を変えれば、テコの効き方が変わる。

絞りを変えれば、肩や肘、手首の使い方が変わる。

高さや前後位置が変われば、上半身の姿勢やフロントへの入力の仕方が変わる。

セパハンにすれば、それらがさらに大きく変わります。

たとえばSR400をセパハンにすると、見た目がカフェレーサーになるだけではありません。

ハンドル幅が狭くなり、位置が低くなり、前傾姿勢になり、同じバイクでもステアリングへの入力の仕方そのものが変わってきます。

つまりハンドルは、

「手を置く場所」

であると同時に、

「バイクをどう操作するか」

を決めている部品でもあるわけです。

ノーマルの数センチにも、理由がある

私自身、モトクロッサーでは昔から何度も、そしてごく最近も、

「もう少し狭い方が自分の体格には合うんじゃないか」

と思って試しています。

サンダーで少し切って乗ってみる。

でも、どうもしっくりこない。

そして結局、元に近い幅へ戻る。

そんなことを繰り返していると、純正で決められている数センチにも、やっぱりそれなりの理由があるのだろうなと思います。

もちろん純正が、すべてのライダーにとって絶対の正解ではありません。

自分に合わせて変えるのもカスタムの楽しさです。

ただ、

「広いから少し切ろう」
「もっと絞った方が楽そう」
「セパハンの方が格好いい」

と思ったときに、

「これで操作感も変わるんだな」

ということは知っておいた方がいい。

ハンドルは、ただ手を置くための棒ではありません。

数センチ、数度の違いでも、倒し込みから実際の舵角、そしてその舵角を戻すところまで、バイクの「操り方」そのものが変わります。

だからこそ、まずノーマルの幅や形にどんな意味があるのかを知ったうえで、自分の体格や乗り方、好みに合わせて変えていく。

そう考えると、ハンドルカスタムは見た目以上に奥の深いものなのだと思います。

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