
YSP大分では、点検や整備でご入庫いただいた際に、走行距離も記録させていただいています。
その中で感じるのは、前回のご入庫からあまり走行距離が延びていない方も、けっこう多いということです。
もちろん、通勤や通学など日常の足として使っている方は別です。
ですが、趣味の乗り物としてバイクに乗っている場合、思ったほど距離が伸びていないことは珍しくありません。
バイクが嫌いになったわけではない。
手放したいわけでもない。
でも、気がつけば前回の点検からあまり乗っていなかった。
そんなことは案外よくあります。
では、どうしてそうなってしまうのでしょうか。
仕事が忙しい。
休みが合わない。
天気も不安定。
家のこともある。
たしかに、それらは大きな理由です。
でも実際には、「忙しいから乗れない」だけではないことも多いように思います。
本当は少し時間ができた日があっても、なぜか乗らない。
乗ろうかなと思ったのに、結局そのままになる。
そんなこと、ありませんか。
その理由は、バイクに乗ること自体が嫌になったからではなく、乗るまでが少し面倒になっているからかもしれません。
面倒が積み重なると、乗る気持ちは消えていく
バイクは車と違って、思い立ってすぐ出るには少し準備が必要です。
ヘルメットを出す。
ウェアを探す。
グローブはどこだったか。
空気圧は大丈夫か。
ガソリンは入っているか。
久しぶりだからエンジンはかかるか。
出し入れしやすい状態か。
ひとつひとつは小さなことでも、それが重なると「今日はやめておこうか」となりやすい。
そして一度乗る間隔が空くと、その面倒さはさらに大きく感じられるようになります。
つまり、乗れなくなる理由は、単純な忙しさだけではなく、出発までのハードルが少しずつ高くなっていることにもあるのです。
乗る機会が減ると、次に乗るのがさらにおっくうになる
ここで、もうひとつ大きいのが「乗る機会が減ること」そのものです。
しばらく乗らないと、次に乗る時に少し気合いが要るようになります。
感覚が遠のいた気がする。
準備が面倒に感じる。
久しぶりだから、なんとなく腰が重い。
そしてそのおっくうさが、また次の「乗らない」を生んでしまう。
つまり、
乗る機会が減る
↓
次に乗るのがおっくうになる
↓
ますます乗らなくなる
という流れが起こりやすいのです。
これは多くのライダーに起こることですが、特に大型バイクになると、この傾向は強くなりやすいように思います。
大型バイクは魅力がある。でも気軽さは下がりやすい
実際、250ccに乗っていた頃はよく出かけていたのに、大型免許を取って大型バイクに乗り換えたら、急に乗る回数が減った。
そんな話は珍しくありません。
大型バイクは魅力があります。
余裕もあるし、存在感もあるし、所有する満足感も高い。
長く乗りたいと思える一台に出会うこともあるでしょう。
でもその一方で、どうしても乗り出すまでのハードルは上がりやすいです。
車体が重い。
取り回しに少し気を使う。
出し入れも気軽とは言いにくい。
装備もそれなりに整えたくなる。
「せっかく乗るなら、ちゃんと走りたい」という気持ちも出やすい。
そうすると、250ccの頃には自然にできていた
「ちょっとそこまで」
「少しだけ走る」
が減っていきます。
大型バイクは、乗っている時の満足感は高い。
でも、乗り出すまでの気軽さは下がりやすい。
この差が、実際の出動回数にかなり影響していることは多いのではないでしょうか。
もちろん大型バイクが悪いわけではありません。
ただ、好きなバイクであっても、日常的に動かすには少し覚悟が要る。
そこは現実としてあると思います。
乗らないと、バイクの状態も落ちていく
さらに厄介なのは、乗らない時間が長くなると、バイクの状態まで乗り出しにくい方向へ進みやすいことです。
バッテリーが弱る。
タイヤの空気が減る。
チェーンの状態が気になる。
燃料や各部のコンディションも不安になる。
せっかく「今日は乗ろう」と思った日にエンジンがかからないと、それだけで気持ちは折れてしまいます。
乗らない
↓
状態が落ちる
↓
さらに乗るのが面倒になる
↓
ますます乗らない
この流れに入ると、バイクそのものが嫌いになったわけではないのに、距離ができてしまいます。
だからこそ大事なのは、次に気が向いた時にすぐ出られる状態を、できるだけ作っておくことです。
「どこに行くか決まらない」も、意外と大きい
もうひとつ、見落とされがちなのがこれです。
それは、行く理由がはっきりしないことです。
車なら買い物、送り迎え、荷物の運搬など、使う理由が自然にあります。
でもバイクは、乗ること自体が目的になりやすい乗り物です。
「どこに行くかは、走りながら決めてもいい」
本来はそれで十分なはずです。
けれど実際には、出かける前に少し考えているうちに、
今日はどこへ行こう
あそこでもいいか
でも、わざわざ行かなくてもいいか
時間も中途半端だし
また今度でいいか
というふうに、だんだん熱が冷めてしまうことがあります。
つまり、目的地が決まっていないこと自体が問題というより、決めるまでの間に乗る気持ちがしぼんでしまうことの方が大きいのかもしれません。
その点、いつも一緒に走る人がいると、事情は少し変わります。
誘われたから行こう。
あいつを誘ってみよう。
顔を出すだけでもいいか。
そんなふうに、人がいること自体が乗る理由になります。
バイクは一人でも楽しめる乗り物ですが、乗るきっかけまで一人で作ろうとすると、意外と難しいものです。
だからこそ、仲間の存在が出発の後押しになることは少なくありません。
バイクに乗る理由は、もっと小さくていい
コンビニまででもいい。
少し遠回りして帰るだけでもいい。
30分だけ走るのでもいい。
そして季節の変わり目には、その変化を感じられる場所を訪ねる。
これはとてもいい「乗る理由」だと思います。
春のやわらかい風。
初夏の草や水の匂い。
夏の山の涼しさ。
秋の澄んだ空気。
冬の張りつめた朝の景色。
バイクは、風を身体で感じる乗り物です。
車では見えるだけの景色が、バイクだと温度や湿り気、匂いまで含めて身体に入ってくる。
だからこそ、季節の変化を確かめに行くというだけでも、十分に意味のある時間になります。
有名な観光地でなくてもいい。
立派な目的地でなくてもいい。
風を感じに行く。
季節が変わったか確かめに行く。
それだけでも、バイクに乗る理由としては十分です。
乗り続けるために必要なのは、気合いより準備
バイクにもっと乗るために必要なのは、気合いではなく、むしろ仕組みかもしれません。
ヘルメットやウェアをすぐ手に取れるようにしておく。
走り終えたらできるだけ燃料を入れておく。
空気圧やバッテリーなど、気になる部分を普段から見ておく。
雨具や防寒具をすぐ使えるようにしておく。
バイクを出しやすい状態にしておく。
そうしておくと、「今日はどうしようかな」が「少しだけ行ってみるか」に変わりやすくなります。
そして準備しておくことは、単なる几帳面さではなく、乗る機会を守るための工夫なのだと思います。
準備が整っていると、出撃しようと思った時の気持ちが一瞬でできあがります。
さらに、いつでも走れる状態を作っておくこと自体が、自分はいつでもバイク乗りとして動ける、という感覚にもつながります。
昔の言葉でいえば、いざ鎌倉です。
普段から心と道具の両方が整っているからこそ、いざ乗ろうと思った時にも気おくれせず、自然に出られるのです。
忙しいから乗れない、だけではない
もちろん、本当に忙しい時期はあります。
体力や家庭の事情もあるでしょう。
それは間違いなく現実です。
でもその一方で、
忙しいことだけを理由にしてしまうと、見えなくなるものもあります。
面倒が増えていないか。
出るまでの準備が重くなっていないか。
乗る理由を大きくしすぎていないか。
乗る機会が減ったことで、次の一回がさらに遠のいていないか。
そこを少し見直すだけで、バイクとの距離は意外と縮まることがあります。
最近バイクに乗れていないのは、忙しいからだけですか?
もし少しでも思い当たることがあるなら、次は大きなツーリングを計画するより先に、
すぐ出られる準備をして、風を感じに少しだけ走ってみる。
それくらいからで、ちょうどいいのかもしれません。