
先日、歯が痛くなって歯医者に相談しました。
私は普段から定期的に歯医者へ通っていて、歯の掃除もしてもらっています。
もちろん、そのたびにお金はかかります。
特に悪いところがなければ、
「今日は掃除だけだったな」
と思うこともあります。
でも今回、歯が痛くなって相談して、結果的には神経を取る治療をすることになりました。
そのとき、ふと思ったんです。
これ、バイクも同じじゃないかな、と。
■ 定期的に通っているから「おかしい」と気づける
今回、歯医者で、
「ここがちょっと痛いんです」
と相談すると、先生も、
「あれ、そうなの?けっこうちゃんと通ってもらってチェックしてるのに、おかしいなあ」
という感じでした。
普段から定期的に診てもらっているので、先生の側にもこれまでの状態があります。
そこで、
「じゃあ、レントゲン撮ってみようか」
となりました。
すると、ありました。
奥の方に虫歯が。
表から普通に見ただけでは分かりにくい場所だったようです。
結果的には、その歯の神経を取る治療をすることになりました。
ここで思ったんですよね。
もし普段から歯医者に通っていなかったら、どうだっただろう、と。
「ちょっと痛いけど、そのうち治るかな」
と、もう少し我慢していたかもしれません。
でも定期的に診てもらっているから、
「ちゃんとチェックしているのに痛い。これは何かおかしい」
と自分も思えた。
先生の側も、
「いつも見ているのに、ここが痛いのはおかしい」
と考えた。
そして、普通に見ただけでは分からないところまで調べてみよう、となったわけです。
これって、バイクもかなり似ています。
■ 「なんかおかしいんですけど?」と言われたら、まずカルテを見る
当店でお買い上げいただいたバイクについては、点検や整備の履歴がデータとして残っています。
ですから、お客様から、
「なんか最近おかしいんですけど?」
と相談を受けたとき、まず見るのはそのバイクの履歴です。
人間でいえば、カルテみたいなものですね。
前回はいつ点検したのか。
そのときの走行距離は何kmだったのか。
何を交換したのか。
どこを整備したのか。
以前、似たような症状がなかったか。
そういうものを見ながら、
「ここは前回確認しているから、たぶん違うな」
「この部品もまだ交換してそれほど経っていない」
「では、こっちかな?」
と、少しずつ原因を絞り込んでいきます。
今回の歯医者でいう、
「普段ちゃんと診ているのに痛いのはおかしい。それなら見えていないところを調べてみよう」
というのとよく似ています。
■ 走行距離だけでなく「どのくらい乗っているか」も大事
バイクの場合は、走行距離も大きな判断材料になります。
前回の点検から何km走っているのか。
年間どのくらい走る方なのか。
通勤で毎日使っているのか。
休日だけ乗るのか。
長距離ツーリングが多いのか。
こういう使い方によって、疑う場所も変わってきます。
そして、
「あまり乗らない」
ということも、立派な情報になります。
バイクは走行距離が少なければ何も傷まない、というわけではありません。
あまり乗らなければ、バッテリーの状態や燃料、タイヤ、ゴム類、油脂類など、距離とは違うところが影響することがあります。
例えば、
「走行距離は少ないのに調子が悪い」
という相談でも、
普段の乗る頻度が分かっていれば、
「もしかすると、あまり乗っていないことの方が関係しているかもしれない」
と考えることができます。
つまり、整備履歴というのは、
「何を修理したか」
だけではありません。
走行距離や期間、その方の乗り方まで含めて見ていくことで、初めて役に立つ情報になります。
■ 初めて見るバイクは、全部ゼロから
逆に、これまで一度も見たことのないバイクが突然入庫した場合は、かなり事情が違います。
「こういう不調があるんです」
と言われても、
いつからそうなのか。
以前はどうだったのか。
どんな乗り方をされているのか。
年間どれくらい走るのか。
どのくらいの頻度で乗っているのか。
過去にどんな整備をしてきたのか。
まず、そこから確認していかなければなりません。
こちらには比較する「前回」がないからです。
取り付けられている部品が純正なのか。
以前、どこかを修理しているのか。
長期間動かしていなかった時期があるのか。
そういうことも一つずつ確認していきます。
同じ症状でも、
毎日通勤で使っているバイクと、
月に一度しか乗らないバイクでは、
考えられる原因が違うこともあります。
■ 車両だけでなく、乗っている人のことも分からない
初めてのお客様の場合、バイクのことだけではなく、その方がどんな使い方をしているのかも分かりません。
通勤中心なのか。
休日のツーリングが中心なのか。
長距離をよく走るのか。
これから何年も乗り続けたいのか。
ある程度費用がかかっても、しっかり直して乗りたい方なのか。
それとも、できるだけ費用を抑えて必要なところだけ直したいのか。
整備を進めていった結果、大きな修理が必要になりそうなこともあります。
そうなったとき、
どの程度まで修理をご提案していいのか。
その修理費用が、その方にとって現実的なものなのか。
初めてでは、そこも分かりません。
ですから、一つずつ確認しながら進めることになります。
■ 普段のお付き合いで分かってくることがある
一方で、普段から点検や整備でお付き合いのある方なら、少しずつ分かってくることがあります。
「この方はよく長距離を走る」
「通勤で毎日使っている」
「この方は月に一度くらいしか乗らない」
「予防整備をしっかりしたいタイプ」
「できるだけ長くこのバイクに乗りたいと思っている」
そういうことです。
もちろん、勝手に決めつけるわけではありません。
ただ、普段からお話ししながら整備をしていれば、その方がバイクをどう使って、どう付き合っていきたいのかが少しずつ分かってきます。
だから何かあったときも、
「この方の使い方なら、ここは早めに交換した方がいい」
「走行距離は少ないけれど、年数が経っているからこちらを確認してみよう」
「ここはすぐ交換しなくても、次回まで様子を見てもよさそうだ」
という提案がしやすくなります。
つまり、普段から見ているというのは、
バイクの履歴を知っているだけではないんですよね。
バイクと、乗っている人。
その両方を少しずつ知っていくことだと思います。
■ 普段行っていないと、相談するタイミングも遅くなる
これは人間の心理としてもあると思います。
何年も整備工場との接点がないと、
「これくらいで持っていっていいのかな」
「久しぶりだから相談しにくいな」
と思うことがあります。
少しくらい音がしても、
「まあ、こんなものかな」
と乗り続けてしまう。
そして本当に動かなくなってから入庫する。
そんなケースもあります。
歯医者も同じですよね。
普段まったく行っていないと、
「このくらいならまだいいか」
となって、相当痛くなってから行く。
普段から通っていると、
「ちょっと違う」
くらいでも相談しやすい。
この「相談しやすさ」は、意外に大きな価値だと思います。
■ 点検していれば壊れない、という話ではありません
もちろん、定期点検をしていれば絶対に故障しない、という話ではありません。
今回の私の歯もそうでした。
定期的に通ってチェックしてもらっていたのに、奥の見えにくいところに虫歯ができていました。
バイクも同じです。
機械ですから、突然壊れることもあります。
部品も劣化します。
点検した直後に不具合が起きる可能性だってゼロではありません。
でも、
「点検していたのに壊れた。だったら点検なんて意味がない」
とはならないと思うんですよね。
普段の状態を知っている。
前回どこまで問題がなかったかを知っている。
走行距離や使用頻度も分かっている。
その情報があるからこそ、何か起きたときの次の一手が早くなります。
■ 「何もありませんでした」にも価値がある
歯医者で定期的に歯を掃除してもらうのも、お金はかかります。
毎回、大きな治療をするわけではありません。
「今日は掃除して、特に問題ありませんでした」
で終わることもあります。
でも考えてみれば、
定期的に専門家に見てもらう。
前回との変化を確認してもらう。
小さな異常を相談できる。
必要なら詳しく調べてもらう。
そういう環境そのものに、お金を払っているんですよね。
バイクの点検も同じだと思います。
点検して、
「特に問題ありませんでした」
と言われると、
「じゃあ、点検代は何だったんだろう」
と思う人もいるかもしれません。
でも、
「今のところ問題がないことを確認できた」
それ自体が、ひとつの点検結果です。
そして、そのときの走行距離と状態が履歴として残る。
それが後になって、
「この時点では問題なかった」
という重要な情報になります。
■ 点検代は、作業代だけではない
定期点検というと、
ボルトを締めたり、
ブレーキを見たり、
タイヤを確認したり、
そういう作業そのものにお金を払っているように見えます。
もちろん、それもあります。
でも私は、それだけではないと思っています。
普段から車両を見てもらう。
状態の履歴を積み重ねる。
走行距離や使用状況を知ってもらう。
乗り方や使い方を知ってもらう。
そして何か気になったとき、
「これ、ちょっとおかしくないですか?」
と気軽に相談できる。
今回の歯医者でいえば、
「普段ちゃんと診ているのに痛いのはおかしいな。では、もう少し詳しく調べてみよう」
となった。
そういう環境を持っておくことにも価値があります。
言い方を変えれば、定期点検代というのは、
「異常に早く気づける環境への課金」
でもあるのかもしれません。
そして、
「何か起きたときに原因を探しやすくするための積み重ね」
でもあります。
■ バイクにも「かかりつけ」があった方がいい
人間には、かかりつけの病院があります。
歯には、かかりつけの歯医者があります。
だったらバイクにも、
「ちょっと変なんだけど」
と気軽に言える店があった方がいい。
私はそう思います。
定期点検の意味は、その日に故障を見つけることだけではありません。
普段から状態を見てもらう。
車両のカルテを積み重ねてもらう。
どんな乗り方をしているのかも知ってもらう。
そして何かあったとき、
「前回はここまで問題なかった。走行距離はこれくらい。使い方はこう。だったら次はここを疑ってみよう」
と考えてもらえる。
そこまで含めて、普段から整備工場と付き合う意味なのではないでしょうか。
バイクに乗っていて、
「これ、前とちょっと違う気がする」
そう思ったときに、気軽に相談できる人はいますか?
もしかすると、それもヘルメットやプロテクターとは少し違う形の、
ひとつの安全装備なのかもしれません。