
ヤマハの革新技術が生み出す感動と一体感
2輪というものは、はるか昔から決して乗りやすい乗り物ではありませんでした。
まぁタイヤたった二つでバランスをとりつつ走るなんて、飛行機が空を飛ぶのと同じくらい正気の沙汰ではありません。だからこそ上手く乗れる事がステイタスでもある乗り物なのかとも思います。
しかしそれはバイクというものに魅せられた者たち共通の夢、ライダーの日々の努力もさることながら、バイクを造るメーカーも乗りやすいバイクを造りたい願いは同じ。日進月歩、日々研鑽を重ねているのです。
その点、ヤマハは「感動創造企業」として、走る楽しさと一体感のあるバイク作りを目指してきました。ヤマハは、そんな乗りにくさを乗り越え、人間の感性のため、
さまざまな技術を開発してきました。それが感動を生み出す一翼を担っています。
思うように曲がれないとか、怖いとか「乗っても楽しくないんだったら意味ないだろ」というのがヤマハの考えなのかなと、YSPという販売店の立場として思います。
この記事では、ヤマハが過去に採用した技術機構の一部について、その特徴や採用された背景、効果などを振り返ってみます。「走る楽しさと一体感」を得るための試行錯誤の歴史、再発見してみましょう。
1. YPVS(ヤマハパワーバルブシステム)
初登場年:1983年
装着車両:RZ250R、RD350LC、TZRシリーズ、YZシリーズなど
背景と経緯
1980年代、2ストロークエンジンの特性として、高回転では強力な出力を発揮する側、低回転領域でのトルク不足が課題とされていました。これにより、エンジンの回転領域全体でバランスの取れたパフォーマンスを実現しました。このYPVS以降、他社メーカーも同様の様々な機構で対抗を試みました。つまりその先駆けであったということです。
効果
- 低回転領域:トルクを向上させ、発進や低速走行を快適に。
- 高回転領域:最大出力を引き出し、高速領域で力強い走行を実現。
2. EXUP(イグザップ、 エキゾーストアルティメットパワーバルブ)
初登場年:1987年
装着車両:FZR400、FZR600、YZF-R1、MT-01など
背景と経緯
4ストロークエンジンにも「排気系の最適化」による低中速トルク向上のニーズがありました。EXUPは、可変排気バルブを設けることで、低速領域のトルクと高速領域の出力を両立する革新技術として登場しました。エンジンの回転速度などの条件に合わせて開度を変えて排気圧力波を抑制するもの。先述のYPVSもそうですが、もともとがピーキーなオートバイエンジンは高回転のパワーを損なうことなく、扱いやすい中間トルクを得ることが至上命題であったことがわかります。
効果
- トルク向上とスムーズなパワーデリバリーを実現。
- スポーツバイクの性能をさらに引き出す画期的な技術。
3. YDIS(ヤマハデュアルインテークシステム)
初登場年:1982年
装着車両:XT400 XT250T SRX600、SRX400 SRX250など
背景と経緯
単気筒エンジンの特性を改善するために、ヤマハは1つのシリンダーに2つのキャブレターを採用する「YDIS」を開発しました。
強制開閉式(VM型)のプライマリ側と負圧式(CV型)のセカンダリ側の組み合わせで、強制開閉のツキのよい操作感と負圧キャブのマイルドさをうまく組み合わせた特徴的なキャブレターです。
強制開閉キャブでパワーを狙ってボアを大きくすると低速が効かない、また負圧キャブだけだと低速がもっさりしてスポーティー感がない、そこで小径ボアの強制開閉と高速域担当の負圧キャブを組み合わせたというわけです。ひとつのエンジンに種類の違う二つのキャブ、これにより、低速領域から高速領域までバランスの取れたエンジン特性を実現しました。
効果
- 低速領域:トルクを向上し、発進や低速走行がスムーズに。
- 高速領域:十分な吸気を確保し、高回転でのパワーを引き出す。
- 単気筒エンジンの汎用性を高め、スムーズな走行フィールを実現。
4.デルタボックスフレーム
初登場年:1985年(レーサー:YZR500)、1987年(市販車:FZR1000)
装着車両:TZR250、YZF-Rシリーズ、XSRシリーズなど
背景と経緯
高剛性かつ軽量なフレームを実現するために、ヤマハはデルタ形状を採用したアルミフレームを開発。レーシングマシンの技術を市販車に取り入れることで、より高い操作性と安定性を目指しました。ボディの優れたバランスが得られ、クイックなハンドリングと安定感ある走りを生み出します。
名称由来はヘッドパイプを側面から見ると三角形なので“デルタ”であり、断面は箱形なので“ボックス”です。
効果
- 高速領域での安定性向上とシャープなコーナリング性能。
- 軽量化により、より俊敏な操作が可能に。
5.モノクロスサスペンション
初登場年:1973年(レーサー:YZ250)
搭載車両:DTシリーズ、YZシリーズ、MTシリーズ、Rシリーズなど
背景と経緯
オフロード車の操作性向上を目指し、ヤマハは従来のツインショック形式から、1台のショックユニットを使用する「モノクロスサスペンション」を開発しました。
タンク下に配置された1本のショックユニットを独特な形状のスイングアームで直押し、最大ストローク量を倍近くにすることができました。
1973年モトクロス全日本選手権で初採用、テストではそれまでの機構のものと比べ、1周で3秒以上も速いという圧倒的な性能を見せつけたと聞いています。
以降、他社を巻き込んだリンク式サスペンションの開発競争へと発展していきました。ヤマハはそのきっかけを作ったというわけです。
効果
- 軽量化とシンプルな構造。
- 路面追従性が向上し、オフロードやオンロードでの快適性を実現。
- その後、多くのバイクに採用され、現代の標準的なサスペンション形式の基盤を構築。
6. YCC-T(ヤマハチップ制御スロットル)
初登場年:2006年(YZF-R6)
装着車両:YZF-R1、MT-09、TRACER9、XSRシリーズなど
背景と経緯
従来のスロットルケーブルを廃止し、電子制御によるスロットル操作(ライヴワイヤ)を可能にする技術です。エンジン制御をより正確に行うことで、性能向上だけでなく、燃費や安全性の向上にもつながりましたた。これにより、“滑らかなレスポンス”と“スポーティなパワー”を両立させています。
ちなみに初期のころはつながってはいないがワイヤーはあり、スロットルの自然な抵抗感を出していた時期もありました。
効果
- 燃費の向上:最適な燃料噴射を実現。
- 安全性: トラクションコントロールとクルーズコントロールとの連携が可能。
- スムーズな操作性:ライダーの操作に対する応答性が向上。
7. YCC-I(ヤマハチップ制御吸気)
初登場年:2007年(YZF-R1)
装着車両:YZF-R6、MT-09、TRACERシリーズなど
背景と経緯
回転数に応じて吸気管を最適な長さに調整することでエンジンの効率を最大化しました。吸気管長が短ければ高回転型となり、逆に長ければ低回転型となりますが通常は固定されたものです。
YCC-Iはエンジン回転数やスロットル開度に応じてそのファンネル長をロング/ショートに切替えることで走行状態に最適なものにします。
効果
- 低回転領域: 吸気管を長くすることでトルクを主張。
- 高回転域:吸気管を短くし、吸気抵抗を低減して最大出力を発揮。
- 連続回転領域で優れた性能を発揮するエンジン特性を実現。
技術は形を変え未来へと残っていく
これらの技術は、ヤマハがバイクを「人間の感性」に寄り添う乗り物にするために開発した革新の結晶です。それぞれが異なる目的を持ちながら、ライダーに感動と安心感を提供する重要な役割を担っていきました。
もちろん、これらの技術が、すべてそのまま今も使われているわけではありません。なくなったものも多数あります。しかし名前だけ残り進化したもの、違う形でその知見が役にたっているものなど、その考え方はなんらかの形で今のバイクに反映されているものです。
かつてのバイクが熱かった時代、様々な技術革新が起こりバイクは劇的に進化しました。それのきっかけとなっていたのはヤマハの独創的なこれらの技術だったように思います。もちろん一社だけでなく4メーカーが競い合うように新技術を開発していたからこそ、激しく発展したのでしょう。
このようにして、ヤマハは「乗る楽しさ」を進化させながら、より多くの人々にバイクを身近な存在として感じてもらうことを目指しているのです。ぜひ身近なヤマハのバイクにそれを感じ取ってみてください。