ニューモデルなぜオフロード初心者にWR125Rなのか。大きなバイクが経験不足を補うとは限らない

「オフロードに乗ってみたいんですよ」

お客様から、そんな相談を受けることがあります。

「おお、いいですね。WR125Rなんか、いいんじゃないですか?」

そうお答えすると、今度はこんな反応が返ってくることがあります。

「えっ、もっと大きいバイクのほうがよくないですかね?」

「自分はオフロードの経験がないので、もう少し本格的なものを買ったほうが……」

なるほど、その気持ちも分からなくはありません。

経験がないからこそ、性能の高いバイクを買ったほうが安心なのではないか。自分に足りないものを、機械の性能で補えるのではないか。

また、せっかく買うなら125ccより250ccのほうがよいのではないか。周囲から初心者に見られたり、小さいバイクに乗っていると思われたりしないだろうか。

口には出さなくても、そんな気持ちもあるのかもしれません。

しかしオフロードの場合、高性能なバイクを買えば、経験不足を機械が埋めてくれるとは限りません。

むしろ反対になることがあります。

高性能なバイクほど、ライダーにも仕事を求める

オフロードでは、サスペンションだけが路面からの衝撃を吸収しているわけではありません。

腕、膝、足首、股関節を柔らかく使い、ステップの上で身体を動かす。バイクの動きに合わせて荷重をかけたり、抜いたりする。

つまり、ライダーの身体もサスペンションの一部です。

ところが、まだフォームが身についていないうちは、怖さからハンドルにしがみつき、腕や膝を突っ張ってしまいます。

すると、どれほど高性能なサスペンションが付いていても、その動きをライダー自身が邪魔してしまいます。

サスペンションは付いています。しかし、それをうまく仕事させられないのです。

競技用の硬いサスペンションは、ある程度の速度で走り、正しい位置からしっかり荷重をかけることで、本来の性能を発揮します。

低い速度で恐る恐る走り、身体も固まっている状態では十分に動かせません。高性能なのに、「硬い」「曲がらない」「跳ねる」「怖い」という印象だけが残ることもあります。

それでは、せっかくレーサーのような本格的なバイクを買っても、何も面白くありません。

競技用の硬いスキー板と同じ

これは、スキー板にたとえると分かりやすいかもしれません。

競技用の硬いスキー板は、高い速度から強く荷重をかけ、板をしならせられる人が使えば、大きな性能を発揮します。

しかし、初心者が低い速度で乗っても、板を十分にしならせることができません。高性能な板が勝手に曲がってくれるわけではなく、むしろ硬くて扱いにくく感じます。

一方、適度に柔らかい板なら、低い速度、少ない荷重でも反応してくれます。

身体をこう動かしたら、板がこう動いた。

荷重をかけたら、こう曲がった。

その答えが返ってくるから、何がよくて、何が違ったのかを身体で覚えることができます。

オフロードバイクも、それに近いところがあります。

高性能なサスペンションは、経験不足を自動的に補ってくれる装置ではありません。それを動かすための速度、荷重、フォームが必要なのです。

余分なパワーがないから、アクセルを開けられる

オフロードでは、パワーが大きいほど面白いとは限りません。

滑りやすい路面でパワーがありすぎれば、わずかなアクセル操作でもリアタイヤが大きく流れます。経験がなければ、その動きに驚いてアクセルを閉じ、身体が固まり、さらにバイクが不安定になります。

パワーがあるのに使えない。

使えないどころか、そのパワーに振り回されてしまう。

それでは、機械の性能がライダーを助けているとはいえません。

125ccなら、余分なパワーに身構えずに済みます。

少しアクセルを開けてみる。リアタイヤが土を蹴る感覚を確かめる。滑り始めても、すぐに立て直す。

速さそのものではなく、「自分が操作してバイクを動かした」という感覚を得やすいのです。

パワーが小さいというより、自分から使えるパワーが多いと考えたほうがよいかもしれません。

柔らかく動くから、フォームへの答えが返ってくる

WR125Rのサスペンションは、レーサーのように競技速度だけを狙ったものではありません。

初心者が走る速度でも比較的しなやかに動き、身体の使い方を変えたときの違いを感じ取りやすい設定です。

ハンドルから力を抜いてみる。

膝を柔らかく使ってみる。

少し前に乗ったり、後ろに乗ったりしてみる。

ステップへの荷重を変えてみる。

そうした一つひとつの動作に対して、バイクから答えが返ってきます。

このフィードバックがあるから、フォームとバイクの動きがつながっていきます。

間違った操作を高性能なバイクに隠してもらうのではなく、自分の操作がどう影響したのかを分かりやすく教えてもらう。

最初の一台には、こちらのほうが大切だと思います。

転ぶことまで含めて、練習しやすい

オフロードでは、転倒を完全に避けながら上達するのは難しいものです。

立って乗ってみる。荷重する場所を変えてみる。いつもより少しアクセルを開けてみる。

新しいことを試せば、うまくいかないこともあります。

そこで、高価で大きなバイクを傷つけたくないという気持ちが強すぎると、失敗しそうな操作を試せなくなります。

WR125Rなら、速度やパワーを抑えやすいため、転倒した際の人や車体へのダメージも比較的小さくできます。

また、壊れた場合の部品代や修理費も、本格的なレーサーや大排気量車に比べれば抑えやすい。立て起こして、壊れたところを直し、また挑戦しようと思えることも、練習するバイクには大切な性能です。

125ccですが、オフロード車としてはフルサイズ

WR125Rは排気量こそ125ccですが、前輪21インチ、後輪18インチのフルサイズホイールを採用しています。

これは250ccクラスのオフロード車と同じ組み合わせです。

小さな車体でオフロード車の雰囲気だけを楽しむバイクではなく、土の上を走るための基本的な構成はきちんと備えています。

一方で、公道を走ることができ、普段の移動にも使える。特別なトランスポーターを用意して、最初から競技コースへ行く必要もありません。

日常の中で乗りながら、機会があれば未舗装路に入ってみる。

そのくらいの始め方でよいのです。

125ccは、妥協ではありません

オフロード未経験だからこそ、もっと大きく、もっと高性能なバイクを選びたい。

その考え方も分かります。

しかし、経験がない人に本当に必要なのは、技術不足を覆い隠してくれるバイクではありません。

余計なパワーに振り回されず、身体を動かした分だけ、分かりやすく答えを返してくれるバイクです。

転んでも、またやってみようと思える。

少しできるようになったことを、自分で感じられる。

その積み重ねがあるから、オフロードは面白くなっていきます。

WR125Rを選ぶのは、大きなバイクに乗れないからではありません。

オフロードの基本を、遠回りせずに楽しむためです。

125ccは、そのうち卒業しなければならない入門用とは限りません。不要なパワーに邪魔されず、自分でバイクを動かす面白さを味わえる、意味のある排気量です。

「オフロードに乗ってみたい」

そう思っているなら、最初から格好よく走る必要はありません。

まずは、自分にも扱えそうな一台で、土の上へ一歩入ってみる。

WR125Rは、その最初の一歩を必要以上に難しくしないバイクなのだと思います。