
先日、お店で事務作業をしながら、オイルの価格についていろいろ確認していた時のことです。
「あれ? オイルって、こんなに高かったっけ?」
ふと目に止まったのが、ヤマハの2ストロークオイル。
オートルーブスーパーオイル、昔からある、いわゆる「青缶」です。
現在のメーカー希望小売価格を見ると、
1リットル 3,300円(税込)。
3,000円?
いやいや、そんなにしたっけ。
私の記憶では、アプリオやJOGなど2ストのスクーターを普通に販売していた時代、青缶なんて800円とか、そのくらいの感覚だったような気がするんですよね。
もちろん、それはかなり昔の記憶です。
では実際、どのくらい値段が変わっているのでしょう。
ちょっと気になったので調べてみました。
少なくとも2013年には、青缶は1,271円だった
昔のワイズギアの資料を調べてみると、2013年7月の価格改定後で、
オートルーブスーパーオイル 1L
1,271円(税込・当時消費税5%)
でした。
現在は3,300円。
13年ほどで約2.6倍です。
これは、なかなかの上がり方ですよね。
では4ストオイルはどうでしょう。
代表的なヤマルーブ スポーツ1Lを見ると、2013年の価格改定後で1,890円(税込)。2016年には1,998円程度でした。
現在は3,080円です。
つまり4ストオイルもかなり上がっている。
ただし、ここで興味深いのは、
「この10数年間、ずっと同じペースで上がってきたわけではない」
ということです。
実は長い間、それほど価格は動いていなかった
ヤマルーブ スポーツは、
2013年 1,890円
2016年 1,998円
です。
数年間で100円程度。
今の感覚からすると、ほとんど変わっていません。
その後、2023年ごろには2,552円、2025年には2,750円、そして現在は3,080円です。
こうして並べてみると、
「昔から少しずつ高くなって、気がついたら今の値段になった」
というより、
「かなり長い間価格を維持していたものが、ここ数年で一気に上がった」
と言った方が近そうです。
では、なぜでしょう。
「原油が高くなったから」だけでは説明できない
オイルですから、最初に思いつくのは原油価格です。
確かに原油価格は関係するでしょう。
でも調べていくと、それだけでは説明しにくい。
原油相場は昔から上がったり下がったりしています。
しかも2016年前後は世界的にはかなり原油価格が安かった時期ですが、その時にヤマルーブが大幅に値下げされたわけでもありません。
ですから、
「原油が2倍になったからオイルも2倍になった」
という単純な話ではなさそうです。
では何が変わったのか。
私が価格の推移を見ていて気になったのが、2021~2022年あたりです。
2022年前後に、いろいろなものが一度に重なった
まずコロナ禍から世界経済が動き出したことで、原材料の需要が急激に戻りました。
ところが工場や物流はすぐには元に戻らない。
コンテナ不足、輸送費上昇、原材料不足などが起きました。
そこへ2022年のウクライナ侵攻。
原油だけでなく、天然ガスやさまざまなエネルギー価格、化学製品などの価格にも影響しました。
さらに日本の場合は円安です。
海外から100ドルで買っているものなら、
1ドル110円なら11,000円。
1ドル150円なら15,000円。
商品のドル価格が変わらなくても、それだけで約4割違います。
エンジンオイルも、単に原油を精製して缶に詰めれば完成する商品ではありません。
基油があり、さまざまな添加剤があり、缶や樹脂容器があり、段ボールがあり、それを工場で製造・充填し、倉庫へ運び、さらに販売店まで運びます。
原料だけでなく、
容器
エネルギー
物流
人件費
為替
そういうものが、ほぼ同じタイミングで上がった。
どうも、この影響が大きいのではないでしょうか。
実際ワイズギアも2022年12月、「社会環境の変化に起因する価格改定が続いており、特に2023年1月、2月に改定が集中している」と案内しています。
価格改定が多すぎて、商品の価格ラベルの貼り替えが追いつかず、今後はラベルから本体価格そのものを削除する、という対応までしています。
これはかなり象徴的です。
それまではメーカーが吸収していたのかもしれない
ここからは私の推測です。
原材料や物流費は、ある日突然上がったわけではありません。
少しずつ上がっていたものを、それまではメーカー側がある程度吸収していたのではないでしょうか。
100円コストが上がったから明日から100円値上げします、というわけにはいきませんからね。
ところが、
原料も上がった。
輸送費も上がった。
電気代も上がった。
円も安くなった。
それが一斉に重なって、
「もう今までの価格では維持できない」
というところまで来たのが2022年前後。
そして実際の製品価格には、2023年以降に大きく反映され始めた。
価格の動きを見る限り、そんなふうに考えると辻褄が合います。
では、なぜ青缶はもっと高くなったのか
ただし、2ストのオートルーブスーパーは4ストオイル以上に値上がりしています。
ここには、もう一つ理由がありそうです。
単純です。
2ストのバイクが走っていないからです。
私たちがアプリオやJOGなどをたくさん販売していた頃、2ストオイルは特殊な商品ではありませんでした。
スクーターに乗っていれば必ず減る。
お店でもホームセンターでもガソリンスタンドでも売れる。
大量に作って、大量に流通させる商品でした。
ところが今、公道を走っている2スト車は明らかに少なくなりました。
それでも、まだ2ストに乗っている人はいます。
PW50など、現在でも2ストオイルを必要とする車両もあります。
ですから商品は作り続けなければならない。現在のワイズギアのラインナップにもオートルーブスーパーは残っています。
ここで面白いことが起きます。
普通は、
「売れなくなった商品なら安くなるんじゃない?」
と思うかもしれません。
工業製品は逆になることがあります。
大量に作れるうちは安く作れる。
しかし生産数量が減っても、製造設備、品質管理、容器、在庫、物流などがゼロになるわけではありません。
それらの費用を少ない販売本数で負担することになる。
すると、1本あたりは高くなる。
青缶が2013年の1,271円から現在3,300円まで上がっている背景には、物価高だけでなく、この「市場そのものが小さくなった」という事情もあるのではないでしょうか。
高くなったのではなく「安く大量に供給できる時代」が終わった?
今回調べてみて、私が一番なるほどと思ったのはここです。
最初は、
「オイル、高くなったなあ」
だけだったんです。
でも、特に2ストオイルについて考えると、少し違うのかもしれません。
昔は町中に2ストスクーターが走り回っていた。
だから大量に作り、大量に運び、大量に売ることができた。
今は、そこまで売れない。
それでも昔のバイクを乗り続けるためには供給してもらわなければ困る。
つまり、
「値上がりした商品」
というより、
「大量消費品から、少量でも供給を続ける商品に変わった」
と見ることもできるのではないでしょうか。
これはオイルだけの話ではないと思います。
古いバイクの純正部品なども同じです。
車両が減り、注文数が減れば、昔と同じ値段で作り続けるのは難しくなる。
需要が減ったら安くなる。
必ずしもそうではないんですよね。
むしろ一定のラインを下回ると、
「まだ供給してもらえること自体にコストがかかる」
ようになってくる。
オイルの値段を調べ始めただけだったのですが、どうもそんな時代の変化まで見えてきたような気がします。