クラッチレスの快適さと、クラッチ操作の奥深さ

はたしてクラッチは不要か?必要か?

最近のバイクには、ヤマハの Y-AMT のようにクラッチレバーのないモデルも増えてきました。
クラッチ操作が不要なため、渋滞や長距離ツーリングでも左手が疲れず、ミスシフトの心配もありません。誰でも安定して乗れる――これは大きなメリットです。

しかし一方で、クラッチ操作には「バイクを操る醍醐味」があります。

乗り物が単なる移動手段、であるだけなら、クラッチなんかないほうがよいのかもしれません。しかしバイク乗りの多くがバイクを単なる移動手段だけ、とは見ていないのもこれまた事実です。


例えばオフロードの世界を見てみましょう。モトクロスの世界では、このクラッチ操作がライディングの鍵を握っており、その精密さはあらゆるバイクの中でもほぼ最上級と言っても過言ではありません。


■ モトクロスが教えてくれるクラッチ操作の世界

  1. 瞬間的な精度が求められる
    コーナー立ち上がりやジャンプ直前、減速の瞬間など、0.数秒単位で切る・つなぐを正確に使い分けます。
    少しでも遅れれば失速、逆に早すぎればフロントが浮く。まさに指先の神経勝負です。
  2. 自分が“トラクションコントロール”になる
    ダートは路面抵抗やグリップが刻々と変化します。
    半クラッチを使って駆動を「にじませ」、グリップを探りながら加速する――電子制御ではなく、自分の感覚で調整します。(※最近はTCSが装備されていたりしますが、あくまで補助的なもの。それにまかせっきりでどうにかなるようなものではありません!)
  3. 高負荷の繰り返し
    ヒート(レース)中は数百回ものクラッチ操作を繰り返します。
    指の握力と持久力だけでなく、常に雑にならない繊細さも必要です。
  4. 減速にも使う
    エンジンブレーキを半クラで調整して、姿勢を作る。
    公道ではあまり行わない、上級者ならではの使い方です。

■ ロードスポーツモデルでも味わえるクラッチの楽しさ

モトクロスはやや大げさな比較としても、ロードスポーツモデルでもクラッチをタイミングよく操作してシフトアップ・シフトダウンする面白さは確かにあります。
まして今や4輪のほぼすべてが移動手段としての進化と引き換えにオートマチックになってしまった現状を考えると、マニュアルトランスミッションを手際よく扱えるというのは、できる人にとってはこの上ない魅力といえるでしょう。

操作がきれいに決まった瞬間の心地よさは、バイクならではの醍醐味です。

ただし、それも運転者の技術、体力、走行条件に華麗に操作ができる余裕があってのことです。


■ Y-AMTの良さとは?

ではY-AMTの何がよいかというと、やはり運転に余裕がなくなるような状況で負担を減らしてくれることです。
ギアチェンジが気持ちよくエンジン回転にあわせて決まるような速度域ならマニュアルも楽しいですが、特にロングツーリングや高速道路での移動など、単調な走行が続くと「楽しさ」よりも「疲労」が積み重なってしまうものです。

街中に多いですが信号が青になって、1速から-2-3-4-5と加速したところで、また信号にひっかかる。5-4-3-2-Nで停止。この足首の上下や左手のグーパーの繰り返しはまさにそんな状況です。

またワインディングなどでも、Y-AMTは回転数や加速度にあわせて的確にシフトアップしてくれるので、その動きに自分のライディングを合わせて走り込むこと自体が楽しさになるという、新しい魅力もあります。


■ まとめ

モトクロスのように刻一刻と変化する路面で走る場合、クラッチ操作は極めて高度で奥深い世界です。
ただ一般道では、そのような動作は必要なく、クラッチやシフトも単調な繰り返しになりがちです。
であるならば、快適さや利便性を優先してY-AMTを選ぶというのも、十分理にかなった選択といえるでしょう。

つまりどういうものを選ぶかは、その人の乗り方や求めるものによって変わるということ。最近バイクがしんどくなってきた、という人がY-AMTなら乗り続けることができる、というならば、それはまったく正しい選択であると思うのです。