バイクの安全装備、何をどこまで着ればいいのか?

大砲は防げなくても、刀傷は減らせる。バイク装備もまた同じです

バイクの安全装備について考えるとき、まず大前提として思うことがあります。

どんな装備にも「完璧」はないということです。

例えば戦国時代。
武将たちは鎧や兜を身につけて戦場に出ていました。

鎧を着ていたからこそ、刀傷や矢、あるいは鉄砲の玉から身を守れたこともあったでしょう。
しかし、どんなに立派な鎧を着ていても、大砲の直撃を受ければひとたまりもありません。

バイクの装備もそれと同じです。

どれだけ高価で優れた装備でも、すべての事故から体を守れるわけではありません。

「これを着ていれば絶対に大丈夫」というものは残念ながら存在しません。

しかし逆に言えば、用途に合った装備をすることで、ケガのリスクや損傷の大きさをかなり減らすことはできます。

バイク用品にお金をかけるというのは、格好のためというよりも
生存率を上げるための装備を買っているという意味が大きいのだと思います。


一番安全なのはやはり革ツナギ

安全性だけを突き詰めるなら、やはり

革ツナギ(レザースーツ)

が最も優れた装備と言われています。

理由は

・摩擦に非常に強い
・体を一体構造で包み込める
・プロテクターがズレにくい

という点です。

転倒してアスファルトを滑ると、普通の服はあっという間に破れます。
すると皮膚が削れ、筋肉まで傷むような大きな損傷につながることがあります。

革ツナギは強い摩擦から体を守るだけでなく、ウェア全体で体を包み込むことで、損傷が広がるのを抑える意味もあります。

言い方は少しよくないかもしれませんが、レザースーツの意味合いというのは骨折を防ぐためだけのものではありません。
骨折したうえでさらに皮膚や筋肉が大きく裂けたり、体が壊れてしまうような深刻な損傷を、少しでも減らすためのものでもあります。


ツーリングでは革ツナギは現実的ではない

ただし、一般的なツーリングとなると話は別です。

革ツナギは

・重い
・暑い
・脱ぎ着が大変
・休憩のたびに大げさになる

など、ツーリングでは少し現実的ではない場面も多いです。

そこでおすすめになるのが

バイク用ジャケット+プロテクター付きパンツ

という装備です。

上半身は

・肩、肘プロテクター入りジャケット
・胸部プロテクター
・背中プロテクター

下半身は

・膝プロテクター入りライディングパンツ

夏であれば

メッシュジャケット+メッシュパンツ

という組み合わせが快適です。

安全性と実用性のバランスを考えると、このあたりが現実的な装備になると思います。


実際の事故で多いケガはどこか

バイク事故というと、多くの方は

「まず頭を守らないと」

と考えると思います。

もちろんヘルメットは最も重要な装備の一つです。
ただ実際の事故データを見ると、ケガが起きやすい部位には少し違った傾向があります。

バイク事故で多いケガの部位は、おおむね次のような順番になります。

1 脚(膝・足首・すね)
2 腕(手首・肘・肩)
3 胸部
4 頭部

これは意外に思われるかもしれません。


一番多いのは脚のケガ

実は、バイク事故で一番多いのは脚のケガです。

理由は、人間は転倒するとき

まず足でバランスを取ろうとする

からです。

低速でも

・Uターン失敗
・立ちごけ
・砂や濡れた路面

などでバイクが傾くと、ほとんどの人は足を出します。

その結果

・足首の捻挫
・膝の打撲
・すねの裂傷

といったケガが多くなります。

さらにスピードが出ている場合は、路面を滑ることで膝が地面に強く当たります。

実は私自身、若いころ交差点で転倒したことがあります。
そのとき履いていたのは普通のジーンズでした。

ジーンズなら丈夫だろうと思っていたのですが、アスファルトにはまったく歯が立たず、膝から血が噴き出すような状態になりました。

転倒すると、人は無意識に膝をついてしまいます。
そのため、膝が最初にダメージを受けることが多いのです。

そう考えると、膝パッドの入っていないパンツは実はあまり役に立たないとも言えるかもしれません。

だからこそ

ジャケットだけでなくパンツも大事

になります。


次に多いのが腕のケガ

次に多いのが腕のケガです。

人は転ぶと反射的に

手をつく

からです。

その結果

・手首骨折
・肘の打撲
・肩の脱臼
・鎖骨骨折

といったケガが起きます。

特にバイク事故で多い骨折の一つが

鎖骨骨折です。

転倒すると肩から地面に打ち付けることが多く、その衝撃が鎖骨に集中するためだと思います。


胸部のケガは頻度は少し下がるが危険

次に来るのが胸部のケガです。

ここは発生頻度としては脚や腕ほど多くありませんが、重症化しやすい部位でもあります。

胸部には

・肺
・心臓
・大きな血管

など重要な臓器が集中しています。

転倒時に

・ハンドルに胸を打つ
・地面に強く打ちつける
・車と衝突する

ことで

・肋骨骨折
・気胸
・肺挫傷

などが起きることがあります。

私自身、モトクロスで肋骨を骨折して気胸になったことがありますが、片側だけでも呼吸はかなり苦しくなります。それが、もし両方同時にとなると命の危険があります。

胸を強打することは当然、公道でもあることなので、胸部プロテクターはレースに限らずとても重要な装備です。


頭部は発生数は少ないが致命率が高い

頭部のケガは発生数としてはそれほど多くありませんが、事故が重くなると致命傷につながりやすい部位です。

だからこそヘルメットは最も基本で、最も重要な装備になります。

ヘルメットは、脱落してしまえば命を守れません。実際、バイク死亡事故の中にはヘルメットが脱落していたケースが一定数あるというデータもあります。あごひもをしっかり締めることは大前提ですが、顔面まで保護できるという点ではジェットタイプよりフルフェイスが有効です。


バイク事故の典型パターン

事故というと

「スピードの出しすぎ」

を想像する方も多いと思います。

しかし実際には、バイク事故の多くは次のようなパターンです。

①交差点での右直事故
②脇道からの飛び出し
③カーブでのスリップ転倒

こうした事故は、ツーリングでも日常的に起こり得るものです。

となると、最もダメージが大きいのはやはり車との衝突です。いくら良い装備を身につけていても、それは鎧で大砲を受けるようなもので、ぶつかってしまえば体を完全には守れません。だからこそ、何より先に危険予測を徹底することが大切です。


装備は生存率を上げるためのもの

バイクの安全装備に完璧はありません。

しかし

・装備
・運転
・危険予測

この三つがそろうことで、事故のリスクやケガの大きさは大きく変わります。

バイク用品にお金をかけるというのは
格好のためというよりも

「生存率を上げるための装備」を買っている

ということなのかもしれません。

ただカッコいいと、いつも着たくなる、それが安全へとつながるものです。

バイクを長く楽しむためにも、
自分の用途に合った装備を選び、できる範囲で安全性を高めていくことが大切だと思います。