安全運転「バイクは危ない」とよく言われますが、本当にそうでしょうか?

危険を分解して考えると、見えてくるものがある

バイクの話になると、よく言われる言葉があります。

「バイクは危ないからね」

ここで誤解のないように言うと、「じゃあバイクは危なくないのか?」と言われれば、そんなことはありません。
バイクは2輪ですし、体がむき出しの乗り物です。なにかあったときに大きなダメージを受けやすいのは間違いないと思います。

ただ一方で、長くバイクに関わる仕事をしている立場から見ると、“バイクの危ない”は、多くの人が想像しているものと少し違うと感じることがよくあります。
よく分析してみると、「危ない」の正体はバイクそのものというより、状況や条件の積み重ねだったりします。


よくあるのは「飛ばしすぎ」ではない

一般のイメージでは

「スピードを出しすぎて転ぶ」

という事故を想像される方が多いと思います。

もちろん、飛ばしすぎで転んでしまう方もいるとは思います。
ただ、バイク販売の現場にいると

「自分は飛ばさないんですよ」

とおっしゃる方がほとんどです。
それをそのまま信用するなら、そこが原因の事故はそれほど多くないのではないかとも感じます。

実際、修理で運ばれてくるバイクを見ても

「いったいどんな走り方をしたら、こんな壊れ方になるんだろう?」

と言いたくなるようなクラッシュは、実はそれほど多くありません。

むしろ多いのは

・対向車の右折による右直事故
・車の左折による巻き込み
・交差点での出会い頭

といった、他の車との関係で起きる事故です。

山道での転倒も

・砂や落ち葉
・濡れた路面
・油断しているタイミング

といった状況が重なって起きることが多いように感じます。

つまり、事故には必ず具体的な原因や状況があります。
そして多くの事故は「攻めすぎ」よりも、予測していなかった状況で起きているように思います。


危険は分解すると見えてくる

事故を大きく分けると、だいたい次のようなものになります。

■ 他車による危険
右折車、車線変更、巻き込みなど

■ 路面による危険
砂、白線、濡れた路面、落ち葉など

■ 車両状態による危険
タイヤ、空気圧、整備状態など

■ 自分自身による危険
油断、疲労、体調、判断ミスなど

このように分解すると、
「バイクは危ない」というより

「何が危ないのか」を考えることが大切だと分かります。


事故は“予測”でかなり減らせる

長くバイクに乗っている人ほど、こうした危険を常に考えています。

例えば

右折待ちの車を見ると
「出てくるかもしれない」

コンビニの前では
「車が出てくるかもしれない」

山道では
「砂があるかもしれない」

こうして危険を予測して走るだけでも、事故の確率はかなり下がります。


50年バイクに乗って思うこと

私はバイクに乗り始めて、もう50年近くになります。免許を取ってからは40年ですね。
モトクロスもやってきましたし、コースではもちろん一般道でも転んだこともあります。

だからこそ思うのですが、
事故というのは、運だけで起きるものではないことが多い。

多くの場合、

・右折車との関係
・路面状況
・自分の油断
・整備状態

など、いくつかの要素が重なって起きています。

逆に言えば、
危険な状況を理解していれば避けられる事故も多いということです。

長く乗っている人ほど

「なんかこの状況は危ない」

という感覚を自然と持っています。

例えば

・右折待ちの車を見ると減速する
・コンビニの前では車が出てくる前提で走る
・山道では路面をよく見る

特別なことではありません。
ただ、危ない状況を想像して走っているだけです。


体調も大切な要素

意外と大きいのが体調や集中力です。

・疲れている
・寝不足
・気持ちが落ち着いていない

そんな日は、判断や反応が鈍くなります。

モータースポーツでも同じですが、
調子が悪い日は無理をしないという判断も大事です。

もちろんプロはそんなこと言ってられませんが。

そして、これは少し感覚的な話になりますが、長くバイクに乗っていると

「今日はなんとなくやめておいた方がいい気がする」

そんな日もあるものです。

例えば、出かける段になって

・バイクの調子がいつもと違う
・必要なものが見つからない
・なぜか段取りがうまくいかない

そんなことが重なる日があります。

いささか神がかり的に聞こえるかもしれませんが、
こういう時は 「今日はやめておいた方がいい」というお告げのようなものかもしれません。

そこを押し通して出かけた結果、事故にあう、ケガをするといったことにつながった経験があります。

それもだいぶ後になって、あのときやめとけばよかった、なんて思うものですけどね。

実際、長くバイクに乗っている人ほど

「今日はやめておこう」

と判断することが意外と多いものです。

こうした感覚を大事にできるかどうかも、
長くバイクに乗り続けて無事故でいられることにつながっているというのは、
案外眉唾でもないように思います。


「バイクは危ない」で終わらせない

だから私は、
「バイクは危ない」と一括りにするのは少し違うと思っています。

本当に大切なのは

・何が危ないのかを知ること
・危ない状況を予測すること
・無理をしないこと

です。

日頃からそれを理解しておけば、仮に危ない目にあうとしても、
紙一重で踏みとどまったり、事なきを得たり、軽傷で済んだり──そんな場面が増えるはずです。
事故というのは「突然起きる」ように見えて、実際はその前に小さな前兆や選択の分かれ道があることが多いからです。

だからバイクに乗るときは、ただ
「楽しい〜!サイコーの気分!」
だけで出発するのではなく、ほんの少しだけでいいので考えてから走り出す

  • 今日の自分はどうか(疲れていないか、集中できるか)
  • 今日は何が危なくなりそうか(交差点、右折車、路面、天気、時間帯)

これを出発前に少し頭に入れるだけで、かなりの部分、バイクは“危険”ではなくなっていくと思うのです。

バイクは確かにリスクのある乗り物です。
でも、危険を理解して付き合っていけば、長く楽しめる乗り物でもあります。

そして一番の安全装備は、パーツではなく「考えること」と「やめる判断」ができる自分自身だと思っています。