安全運転バイクは“考えて操作しているうちは危ない”という話

バイクは“体が勝手に動く”ようになってからが本番

バイクの操作には、ひとつ大きな特徴があります。

それは

考えていては間に合わない

ということです。

バイクで走っているとき、私たちは同時にいろいろなことを処理しています。

アクセル
ブレーキ
クラッチ
シフト操作
バランス
ライン取り
路面状況
周囲の車や歩行者

こうして並べてみるとわかりますが、かなりの情報量です。

これをすべて「意識して」処理するのは、人間の脳にはほぼ不可能です。

だからこそ大事になるのが

操作の自動化

です。


上手いライダーは操作を考えていない

ベテランライダーに

「どう操作しているんですか?」

と聞くと

「体が勝手に動く」

と言われることがあります。

これは精神論ではなくて、実際にそういう状態になっています。

反復して練習した操作は、脳の中で
無意識の動きとして保存されていきます。

すると

クラッチ
アクセル
ブレーキ
体重移動

といった操作を、いちいち考えなくても体が処理してくれるようになります。

そうすると、意識を使えるようになるのが

周囲の状況
危険予測
逃げ道

といった部分です。

つまり

操作は無意識
危険予測は意識

この状態になると、走りに余裕が出てきます。


初心者が危ない理由

免許を取ったばかりの人が危ないのは、単に技術が低いからではありません。

大きな理由は

操作に意識を使いすぎていること

です。

そもそも人間の脳は、意識して同時に処理できる情報がそれほど多くありません。

一般的には

3〜4個くらい

と言われています。

ところがバイクに乗ると

クラッチ
アクセル
ブレーキ
ギア
バランス
ライン
交通状況

など、かなり多くのことを同時に処理しなければなりません。

初心者の方は走りながら

クラッチどうする?
今ギア何速?
アクセル開けすぎ?
ブレーキはどれくらい?

と考えながら操作しています。

そうなると、脳の処理能力のほとんどを操作に使ってしまいます。

結果として

周囲を見る余裕がなくなる

わけです。

しかし公道の危険というのは

右折車
急な進路変更
飛び出し
路面状況

など 外からやってくるもの がほとんどです。

操作に意識を使いすぎてしまうと、危険の発見が遅れてしまいます。

これはパソコンで言えば
ブラインドタッチができるかどうかに少し似ています。

キーボードを見なくても打てる人は、文章の内容を考えながら入力できます。

しかしキーを探しながら打つ人は、入力そのものに意識を取られてしまいます。

バイクの操作もそれと同じです。


自動化には「反復」が必要

では操作を自動化するには何が必要でしょうか。

答えはシンプルです。

反復です。

発進
停止
コーナリング
ブレーキ

こういった基本操作を何千回も繰り返すことで、脳がそれを

考えなくていい操作

として登録していきます。

バイクの上達は

距離より回数

と言われることがありますが、これはとても理にかなっています。

たくさん走ることが大事なのは、単に距離を伸ばすためではありません。

発進、停止、減速、曲がる、加速する
といった基本動作を何度も繰り返すことで、操作が体にしみ込んでいきます。

そう考えると

年に数回しか乗らない大型バイクより
通勤や買い物で毎日のように乗れる小型バイク

の方が、自動化には有利とも言えます。

もちろん大型バイクには、大排気量ならではの魅力があります。

ただ、操作を体に覚え込ませるという意味では

気軽に乗れて、繰り返し操作できること

の価値はとても大きい。

小型バイクは

発進する
止まる
曲がる
周囲を見る
危険を予測する

といった基本を日常の中で何度も繰り返させてくれます。

つまり

ライダーとしての土台を作るバイク

とも言えるのです。


しかしベテランでもできない操作がある

ただ、ここでひとつ重要なことがあります。

それは

普段やっていない操作や、想定していない状況にはベテランでも弱い

ということです。

典型的なのが

緊急ブレーキ

です。

先日、公道を走っていてこんなことがありました。

脇道から軽自動車が出てきたので、それ自体は確認していました。

ところがその車がそのままUターンして
こちらに向かってきたのです。

出てくるかもしれない、というところまでは見えていました。

しかし

こちらに向かってくる

というところまでは想定していませんでした。

高齢のドライバーさんのようでしたが、駐車場から一旦でてきて、そのままそこに戻ろうとしたようでした。

慌ててフルブレーキ。

幸い止まることができて事なきを得ましたが、そのとき強く感じたのは

人は想定外に弱い

ということでした。


モトクロスでも同じことが起きる

これはモトクロスでも同じです。

慣れているコースでは、ある程度無意識で走れます。

しかし、慣れていないコースになると話は別です。

私が若いころ、九州でスーパークロスが開催されたことがあり、出場したことがあります。

そのときのコースは

ジャンプは25メートル以上
フープスは非常に深い
コースはかなりタイト

と、同じモトクロスとは思えないほど別物でした。

本来レースというのは

誰をどこで抜くか
レース展開をどう組み立てるか

といったことを考えながら走るものです。

ところがそのときは

セクションをこなすだけで精いっぱい

でした。

ジャンプ
フープス
次のコーナー

目の前のことを処理するだけで、頭の余裕がなくなってしまう。

これはまさに

脳の処理能力がいっぱいになった状態

です。


なぜ速い人ほど危険を早く見つけるのか

よく

「速い人は反応が速い」

と言われますが、実際は少し違います。

速い人は

危険を早く見つけている

のです。

操作が自動化されていない人は

操作
バランス
シフト

に意識を使ってしまいます。

すると

視線が近くなる

という現象が起きます。

一方、自動化されている人は

遠くの状況
車の動き
交差点の気配

などを見る余裕があります。

つまり

視線が遠くなる

これが、危険を早く見つける理由です。


自動化できるまではどう乗るべきか

では操作がまだ自動化されていないうちは、どう乗るべきでしょうか。

答えはシンプルです。

余裕を残して走ること

です。

スピードを控える
車間距離を広くとる
交差点では必ず減速する
逃げ道を意識する

ベテランライダーほど

「そんなことも起こる」

と考えながら走っています。

これは弱気ではなく

危険予測

です。


バイクを長く楽しむために

バイクの楽しさには

操作する楽しさ
旅の楽しさ
景色

いろいろあります。

でもその前提になるのは

安全に乗り続けること

です。

そのためには

基本操作を反復すること
操作を自動化すること
経験の幅を広げること

そして

自動化できていないうちは

余裕のある走り

をすること。

それが、バイクを長く楽しむための大切なポイントだと思います。