
「両足べったりじゃないと危ない気がする」そのモヤモヤを整理してみます
バイクを選ぶとき、足つきが気になる方は多いです。
「乗りたいバイクはあるけど、跨るとちょっと高い」
「両足がべったりつかないと危ないんじゃないか」
「やっぱり低いバイクのほうが安心なのかな」
「ローダウンしたほうがいいのかな。でも何か悪くなるとも聞く」
こんなふうに、はっきり言葉にはしにくいけれど、なんとなくモヤモヤしている方はけっこう多いと思います。
特に、これからバイクに乗る方、久しぶりに乗る方、自分にあまり自信がない方ほど、まず気になるのは店頭で跨ったときの足つきです。
それは当然です。まだ「走り出してからどうなのか」がイメージしにくいからです。
だからどうしても、
■ 両足がべったりつくか
■ 少しでも低いか
■ 見た目に安心できるか
このあたりが、バイク選びの大きな基準になりやすいです。
でも実際には、バイクの乗りやすさは足つきだけでは決まりません。
そして、両足べったりでなくても、しっかり乗れている方はたくさんいます。
背の高くない方でも、ちゃんと乗れていることは珍しくありません
実際に、背の高くない、例えば女性のお客様でも、しっかりバイクに乗れている方はけっこういらっしゃいます。
もちろん、最初から不安がなかったわけではありません。
むしろ最初は、「自分にこんなバイクが乗れるのかな」と心配される方のほうが多いです。
でも、乗っていくうちに少しずつわかってきます。
「停まるときにどちらの足を出すか。」
「腰を少しずらすとどう変わるか。」
「バイクを必要以上に傾けないこと。」
「低速で落ち着いて扱うこと。」
「停まる場所の傾きを見ること。」
こういうことがわかってくると、最初に思っていたよりずっと普通に乗れるようになることがあります。
これはつまり、体格だけがバイクを決めるわけではないということです。
もちろん、どう考えても大きすぎる、重すぎるということはあります。
でも「背が高くないから無理」と、最初から数字だけで決めてしまうのは少し早いことも多いです。
乗り方や扱い方で、かなりカバーできる部分がある。
これは実際に見ていて本当に感じるところです。
なぜみんな「両足べったり」にこだわるのか
これも無理はありません。
まだ乗り始めていない方や、久しぶりに乗る方にとっては、わからないのは「走り出してから」のことだからです。
「走り出すと意外と軽く感じること。」
「停まるときは片足で支える場面が多いこと。」
「腰を少しずらすだけで届き方が変わること。」
「停まる場所の傾きで安心感が全然違うこと。」
こういうことは、実際に乗ってみないとなかなかわかりません。
その一方で、店頭でいちばんわかりやすいのは足つきです。
だからどうしても、
「低いバイクなら安心そう」
「高いバイクは危なそう」
「アメリカンなら大丈夫そう」
「オフロードやスーパースポーツは無理そう」
という考え方になりやすいです。
でも実際の公道では、停車時は
左足をしっかりついて、右足はブレーキに残す
という形が多いです。
つまり現実には、「両足べったりで均等に支える」ことばかりではありません。
本当に大事なのは、
両足べったりかどうかより、片足でしっかり支えられるかどうか
です。
足つきは、シート高の数字だけでは決まりません
足つきというと、つい「シート高何mm」で考えがちです。
でも、実際の足つき感は数字だけでは決まりません。
たとえば、
■ シート前方の幅
■ シートの角の張り出し
■ 車体の細さ
■ ステップ位置
■ 停止時に腰をずらしやすいか
■ 重さをどう感じるか
このあたりで、実際の「届きやすさ」はかなり変わります。
数字上は少し高くても、前が細いバイクは片足がすっと出しやすい。
逆に数字上は低くても、シート幅が広いと案外届きにくい。
これも、跨った瞬間の印象だけではわかりにくいところです。
では、ローダウンすると何が起こるのか
足つきの不安を減らす方法として、ローダウンがあります。
これはもちろん意味があります。
10mm下がるだけでも安心感がかなり変わる方は多いですし、20mm下がると「だいぶ違う」と感じることもあります。
ただ、ローダウンは「ただ足つきがよくなる」だけではありません。
車体の動きにもちゃんと影響します。
よく「下げると曲がらなくなる」と言われますが、これは半分正しくて、半分ざっくりしすぎた言い方です。
正確には、いくつかの変化が起こります。
1. バンク角が減ります
車高が下がると、ステップやスタンド、マフラーなどが地面に近づきます。
つまり、同じように寝かせても早めに何かが擦りやすくなります。
かなり単純化した話ですが、20mm下がると、使えるバンク角が3〜4度ほど減ることがあります。
10mmでも、1〜2度程度変わることがあります。
街乗りでは気にならなくても、ワインディングを気持ちよく走る方には無視しにくい差です。
2. 車体の姿勢が変わります
ローダウンで実は大きいのがここです。
特にリア側だけを大きく下げると、
■ 曲がり始めが鈍くなる
■ 寝かし込みに少し間ができる
■ フロントが入っていかない感じがする
■ ラインが外に膨らみやすい
という変化が出やすくなります。
これが「曲がりにくくなった」と感じる大きな理由のひとつです。
なので、単純に何mm下げたかだけではなく、
どういう方法で下げたか、前後バランスがどう変わったか
がとても大事になります。
3. サスペンションの働き方も変わります
ローダウンの方法によって、ここはかなり違います。
プリロードだけで下げる場合
足つきはよくなりますが、そのぶんサスペンションが沈みやすくなります。
■ 走る前から沈んだ位置にいる
■ 使えるストロークが減る
■ 加速やギャップでさらに沈みやすい
■ 底付きしやすくなる
こういうことが起こりやすいです。
特に「プリロードだけで20mm下がった」というような状態は注意が必要です。
ローダウンというより、沈んだ状態で走っているのに近いからです。
リンクで下げる場合
見た目としては自然に下がりますが、
■ リアだけ下がりやすい
■ サスの動き方のバランスが変わる
■ 初期だけ柔らかく感じたり、奥で急に硬く感じたりすることがある
ので、これも万能ではありません。
ショックごと交換するローダウンサス
これは比較的まとまりやすい方法です。
下げた状態に合わせて、
■ 長さ
■ ストローク
■ スプリング設定
■ 減衰特性
などを合わせられるので、単に沈ませるだけではなく、低い位置でもちゃんと仕事をするようにしやすいからです。
だから「ローダウンしているのに、意外と普通に乗れる」ということが起こります。
4. 重心も少し下がります
ローダウンすると、ライダーも含めた全体の重心は少し下がります。
これは
■ 低速での安心感
■ 取り回し
■ 停止時の支えやすさ
にはプラスです。
ただ、倒し込みという意味では少し穏やかな方向になります。
もっとも実際には、この重心の変化そのものよりも、
■ 前後バランス
■ 車体姿勢
■ バンク角
■ サスペンションの動き方
のほうが、体感には大きく効くことが多いです。
どのくらい下げると影響が出るのか
「何mm下げたらどのくらい曲がらなくなるのか」という、きれいな共通表はありません。
車種や方法でかなり違うからです。
それでも目安として言えば、
5〜10mm程度
敏感な方なら違いを感じます。
ただ一般公道では、大きな問題にならないことも多い範囲です。
10〜20mm程度
このあたりから、性格がはっきり変わる車種が出てきます。
特にリアだけだと、曲がり始めの鈍さを感じやすくなります。
20mm超
かなり大きい変更です。
車種によっては、バンク角不足や姿勢変化がはっきり出てきます。
つまり、
大きく下げれば大きく安心、で終わる話ではない
ということです。
ローダウンの何がよくて、何がよくないのか
ここはシンプルに整理するとわかりやすいです。
よいこと
■ 足つきの不安が減る
■ 停車時の安心感が増す
■ 立ちゴケの恐怖が減る
■ 低速時に余裕が出る
よくないこと
■ 下げすぎると曲がり始めが鈍くなる
■ バンク角が減る
■ 方法によってはサスの動きが悪くなる
■ 必要以上に下げると、そのバイク本来の良さを損ないやすい
つまり、ローダウンそのものが悪いのではなく、
必要以上に下げること
やり方を間違えること
が問題なのです。
では、実際にはどうすればいいのか
ここがいちばん大事なところです。
1. まずは「片足で支える」前提を知る
大型車では、両足べったりよりも、片足でしっかり支えられることのほうが大事です。
2. 停まる前に、どちらの足をつくか考える
路面の傾きやわだちを見て、どちらの足を出すかを早めに決める。
これだけでもかなり安心感は変わります。
3. 腰を少しずらす
停車時に腰を接地側へ少しずらすだけで、届き方はかなり変わります。
4. シート形状や靴も見直す
たくさん下げる前に、前側を細くする、靴を見直すなどでも改善することがあります。
5. それでも必要なら、最小限のローダウン
ここで初めてローダウンです。
しかも「とにかく大きく」ではなく、まずは必要最小限。
10mm前後でも、安心感がしっかり変わることはあります。
逆に、あまりおすすめしにくいこと
■ 両足べったりを絶対条件にする
■ 店頭で跨った印象だけで「無理」と決める
■ プリロードだけで大きく下げる
■ リアだけ大きく下げる
■ 足つきの不安を、車高だけで全部解決しようとする
このあたりは、あまりおすすめしにくい考え方です。
最後に
足つきは大事です。
でも、バイクの乗りやすさは足つきの数字だけでは決まりません。
両足がべったりつくかどうか。
それはたしかに、わかりやすい安心材料です。
ただ、そこだけを基準にしてしまうと、本当は乗れるはずのバイクまで「無理かもしれない」と思い込んでしまうことがあります。
実際には、
■ 片足でしっかり支えられるか
■ 停まるときに腰を少しずらせるか
■ 路面の傾きや停まる位置を考えられるか
■ 低速で落ち着いて扱えるか
こういったことのほうが、現実にはずっと大事です。
そして、背の高くないお客様でも、最初は不安がありながら、乗り方を覚えてしっかり乗れている例は実際にあります。
それを見るたびに思うのは、体格だけですべてが決まるわけではないということです。
乗り方でカバーできる部分は、思っている以上にあります。
もちろん、無理をする必要はありません。
不安が強すぎるなら、ローダウンという方法もあります。
ただそのとき大切なのは、両足べったりを目指してとにかく大きく下げることではなく、必要な分だけ、正しく考えて調整することです。
だから、足つきに不安がある方にまず考えてみてほしいのは、
「両足がべったりつくか」ではなく、
「片足でしっかり支えられるか」
ということです。
そして、
「下げるか下げないか」だけではなく、
「乗り方でカバーできる部分はないか」
も、ぜひ一度考えてみてほしいのです。
バイクは、ただ足が届くかどうかだけで決まる乗り物ではありません。
どう支えるか。
どう停まるか。
どう慣れていくか。
そこまで含めて、自分に合う一台が見えてきます。
足つきの数字だけで、最初から可能性を狭めてしまうのはやはりもったいない。
不安は不安として大事にしながらも、足つきだけに縛られすぎず、自分に合った方法を見つけていくこと。
それが、バイクと長く付き合っていくうえで、とても大事なのではないかと思います。