
雨の日にバイクなんて、普通は避けたいものです
これから梅雨に入ります。
毎日ではないにしても、雨の日が多くなる季節です。
店頭でお客様と話していても、この時期になるとよく出る話があります。
「雨が降ったら、絶対バイクには乗らないです」
「ツーリングは雨なら中止ですよね」
「点検の日に雨だったら、日を変えたいです」
「レンタルも、雨ならキャンセルしたいです」
もちろん、それでいいと思います。
雨の日のバイクは、濡れます。
視界も悪くなります。
路面も滑りやすくなります。
せっかくのツーリングなら、晴れた日に気持ちよく走りたい。
大事なバイクをわざわざ雨の中で汚したくない。
そう思うのは、ごく自然なことです。
ですから、雨の日に無理してバイクに乗る必要はありません。
予定を変えられるなら、変えた方がいい場合も多いです。
ただ、それでも少しだけ思うことがあります。
雨の日のバイクには、晴れの日とは違う感覚があります。
快適とは言いません。
おすすめとも簡単には言いません。
でも、雨の日にしか感じられない、静かな魅力のようなものがあるのも確かです。
今日は、雨の日に走ることをすすめたいわけではありません。
ただ、バイクには晴れの日だけでは語れない楽しさもある、という話です。
雨音に包まれる、不思議な静けさ
雨の日にバイクで走っていると、不思議と気持ちが落ち着くことがあります。
シールドに当たる雨粒。
ヘルメットを叩く細かな雨音。
レインスーツの肩や腕を流れていく雨だれ。
タイヤが水を切る音。
いろいろな音がしているはずなのに、不思議と世界は少し静かに感じます。
まるで、水の中に潜ったような静けさ。
シールド越しの景色は少しにじみ、周りの音も少し遠くなる。
外を走っているのに、ヘルメットの中だけが小さな部屋になったような感覚があります。
晴れの日のバイクが、外へ広がっていく楽しさだとすれば、
雨の日のバイクは、少し内側へ入っていく楽しさなのかもしれません。
雨音が気持ちを落ち着かせる感覚
YouTubeなどでも、雨音だけを流す動画や、雨のキャンプ、雨の車中泊の動画を見かけることがあります。
ひたすら雨の音を聞いているだけなのに、なぜか気持ちが落ち着く。
そう感じる方も多いのではないでしょうか。
雨音は、完全な無音ではありません。
でも、一定のリズムで続く雨音が、周りの雑音や頭の中の余計な考えを、少し遠ざけてくれるようなところがあります。
雨の日のバイクも、それに少し似ています。
シールドやヘルメット、レインスーツに当たる雨音が、自分の周りに薄い膜を作ってくれる。
外にいるのに、どこか自分だけの静かな空間にいるように感じる。
それが、雨の日のバイクで感じる「水の中に潜ったような静けさ」につながっているのかもしれません。
車とは違う、雨との距離感
4輪でも、雨の日の運転には雨音があります。
フロントガラスに当たる雨。
ワイパーの音。
タイヤが水を踏む音。
それはそれで、少し落ち着く感じがあるかもしれません。
ただ、車の場合は基本的に室内にいます。
エアコンがあり、ワイパーがあり、シートも濡れない。
雨は窓の外で降っているものです。
一方でバイクは、雨との距離がもっと近い。
シールドに雨が当たる。
ヘルメットに雨が当たる。
レインスーツの肩や腕に雨だれが落ちる。
足元には路面からの水しぶきが来る。
濡れないように装備していても、雨はすぐそこにあります。
外にいる。
でも、ヘルメットとレインスーツでぎりぎり守られている。
この距離感が、車とはかなり違います。
雨を「見ている」のではなく、雨の中に「入っている」。
それが雨の日のバイクの、独特の魅力なのかもしれません。
雨の日のキャンプに似た、守られている感覚
この感覚は、雨の日のキャンプにも少し似ています。
タープに当たる雨音。
テントの中にいる安心感。
外は雨なのに、自分のいる場所だけが少し守られているような感覚。
雨の日のバイクにも、それに近いものがあります。
もちろんバイクの場合は、キャンプのように止まって雨音を聞いているわけではありません。
雨の中を走っている。
だからこそ、そこには静けさと同時に、少しの緊張感があります。
でも、その緊張感があるからこそ、余計なことを考えなくなるのかもしれません。
今、前を見る。
今、路面を見る。
今、ブレーキを丁寧に使う。
今、アクセルを静かに開ける。
雨の日のバイクは、気持ちを自然と「今ここ」に戻してくれるようなところがあります。
雨は、丁寧な操作を教えてくれる
雨の日は、バイクに雑な操作を許してくれません。
急なアクセル。
急なブレーキ。
急な寝かし込み。
強引なライン変更。
そういう操作が、晴れの日以上に怖く感じます。
だから自然と、走り方が丁寧になります。
アクセルをいつもより静かに開ける。
ブレーキをいつもよりやさしく使う。
車間距離を少し広めに取る。
路面の色や、白線やマンホールに気を配る。
速く走る楽しさではありません。
無理をせず、バイクと対話するように走る楽しさです。
雨の日のバイクは、ある意味でバイクの基本を思い出させてくれるのかもしれません。
人の少ない観光地にある、静かな特別感
そして、雨の日の観光地もまた、少し違って見えます。
晴れた休日なら人でにぎわう場所も、雨の日は静かです。
道の駅に並ぶバイクも少ない。
駐車場も空いている。
いつもなら人や車が入ってしまう景色も、雨の日はぽつんと静かにそこにある。
山の緑は、雨に濡れて少し濃く見えます。
路面には空や木々が映り込みます。
霧が出れば、いつもの道も少し違う場所のように見えます。
晴れの日のツーリングには、明るさや開放感があります。
雨の日のツーリングには、しっとりとした静けさがあります。
どちらが良い、悪いではありません。
ただ、感じるものが違うのです。
晴れの日だけが、バイクの楽しさではない
バイクの楽しさというと、青空、ワインディング、絶景、心地よい風。
そういうものを思い浮かべる方が多いと思います。
もちろん、それはバイクの大きな魅力です。
でも、バイクの楽しさはそれだけではありません。
雨音に包まれながら、静かに走る。
人の少ない道を、丁寧に走る。
いつもの景色が、雨で少し違って見える。
外にいるのに、ヘルメットとレインスーツに包まれて、自分だけの空間にいるように感じる。
そんな雨の日だけの感覚も、バイクの魅力のひとつだと思います。
晴れの日のバイクが「開放感」だとすれば、
雨の日のバイクは「静けさ」かもしれません。
晴れの日のバイクが「遠くへ行きたくなる楽しさ」だとすれば、
雨の日のバイクは「ゆっくり味わう楽しさ」かもしれません。
それでも、雨の日は無理をしない
ただし、最後に大事なことも書いておきます。
雨の日のバイクは、やはり危険も増えます。
路面は滑りやすくなります。
シールドは曇りやすく、水滴で視界も悪くなります。
車のドライバーからも、バイクは見落とされやすくなります。
雨の日に走るなら、無理をしないこと。
スピードを控えること。
視界を確保すること。
そして、帰ったあとはできれば洗車をして、チェーンや可動部も見てあげること。
雨の日のバイクは、決して気軽にすすめられるものではありません。
でも、雨の日にしか感じられない静けさがあります。
雨の日にしか見えない景色があります。
雨の日だからこそ、丁寧にバイクと向き合える時間があります。
晴れの日だけが、バイクの楽しさではない。
雨の日には雨の日の、静かな魅力があります。
皆さんは、雨の日のバイクにどんな思い出がありますか?
雨の日は絶対乗らない派ですか?
それとも、少しだけわかる派ですか?